プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月3日付紙面を振り返ります。

 2004年11月2日、プロ野球オーナー会議はパ・リーグ新球団として楽天を正式承認しました。日刊スポーツは3日付け1面でこれを報じています。

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 プロ野球のオーナー会議が2日午後、東京都内のホテルで開かれ、来季から仙台市を本拠地とするパ・リーグ新球団としてIT関連企業「楽天」(三木谷浩史社長=39)を全会一致で正式承認した。同業種「ライブドア」(堀江貴文社長=32)との争いに勝った。球団名は「東北楽天ゴールデンイーグルス」で、会社名は「楽天野球団」。三木谷社長は都内で会見し、急務の選手獲得に絡み、オリックス・近鉄合併で行われるプロテクト(優先保有選手)について、選手の意向の尊重などを訴えた。激動を経たプロ野球新時代に若きオーナーが乗り込む。

 都内本社で参入承認の知らせを聞いた三木谷オーナーは、喜びよりも責任と使命を強く感じたという。会見で強く語ったのも「改革」だった。まずは、今月8日に迫った分配ドラフトに異議を唱えた。選手獲得に影響する合併球団のプロテクトやFAに質問が及んだ時だった。

 三木谷 プロテクトは(合併で縮小する)6対5(11球団)を前提に認められたことで、今度は6対6(12球団)に戻るのだから、柔軟性をもってやるのが筋。できるだけ選手の意向を尊重すべき。FA選手獲得についても、新規の球団に配慮して欲しい。

 同ドラフトは今季オリックス、近鉄に所属した選手のうち合併球団が25人を優先的に確保。以後、楽天、合併球団が交互に20人ずつ選んでいく。「選手の意思」とは、プロテクトに難色を示す近鉄礒部や岩隈らを示唆したのは明白だった。選手獲得が急務の要望でもあるが、合併で迷惑を被る選手の救済をも求めた。

 田尾監督が補足した。「楽天の監督という立場を離れたとしても、戦力均等を考え、ほかの10球団の協力をいただきたい」。マーティ・キーナートGMも「エキスパンション(拡張)・ドラフトを実施していただきたい」と願った。同制度は米大リーグで新規参入球団があった時、他球団から数人ずつ選手を選べる形式だ。新球団でもファンにできるだけレベルの高い野球を提供できる。今季途中までの縮小傾向とは正反対の、球団数増加の土壌をつくる改革案でもあった。

 楽天首脳はそろってFA取得の期限短縮と補償金の撤廃、ドラフトの完全ウエーバー制度の導入など次々提案した。どれも、既存球団の経営を圧迫する、人件費高騰を招いた。それにより得をした老舗球団への提言でもあった。

 三木谷オーナーの打ち出す球団の骨格は、若さゆえの熱さだけではない。例えば、この日発表した全陣容では監督、コーチの人数は13人と12球団最少人数にとどめた。巨人の20人、阪神の22人に比べれば少数精鋭に徹して、スリム化を図った。首脳陣のコストを抑えることが得策とは言い切れないが、資金力に頼った人集めは排除した。初期段階で監督就任要請した掛布雅之氏の希望した年俸、契約金が楽天側の予算と3倍近くかけ離れていると知ると、あっさり撤退した。メンツのマネーゲームに発展することを避け、方向転換できる柔軟性を併せ持つ。パに黒字球団はないが「最低4年で黒字経営に転じたい」と高い目標を掲げたのも、チームの強化とともに身の丈に合った健全経営こそ最大の改革だと信じるからだ。

 三木谷オーナーは「楽天かライブドアかが重要ではなく、東北、宮城にチームができることが重要。企業中心ではなく仙台が誇れるチームをつくるのが我々のミッション」と力強く語った。使命感があふれ出た。

 ◆三木谷浩史(みきたに・ひろし)1965年(昭和40)3月11日、兵庫県生まれ。明石高-一橋大商学部。日本興業銀行入行後、91年に米ハーバード大経営大学院に留学し、経営学修士取得。95年11月に同行を退職しコンサルティング会社クリムゾングループを設立。現会長兼社長。97年にインターネット商店街「楽天市場」を開始。00年分の高額納税者番付では約93億円の創業者利益を上げ初登場で2位に入った起業家。