黒田が泣いた!! 広島黒田博樹投手(41)が5日、マツダスタジアムで行われた優勝報告会で3万人超のファンを集めて最後のユニホーム姿を披露した。イベント終盤、チームメートに背番号と同じ15回胴上げをしてもらい、マウンドにひざまずくと感極まって号泣。この日、広島市内で行われた41年ぶりの優勝パレードにも感激し、笑顔を貫いてきた黒田が涙、涙でファンに別れを告げた。

 ハイタッチと抱擁。チームメート1人1人と別れのあいさつをすると、最後にマウンドに右ひざをつけた。うずくまること33秒。黒田は、口に手を当て立つことができない。泣いていた。スタンドを真っ赤に染めた3万810人のファンも、その一点を見つめた。「黒田コール」とともに、特別なうたげは終わりを告げた。

 「あのマウンドに立ってスタンドを見るのも最後かなと思うと、悔しいこととか、いろんなことが思い出された…。自分の中でマウンドにもう上がらなくていいという気持ちと、もう上がれないという気持ちがあった。本当、一瞬ですけど、過去の試合が頭をよぎった。そんな感じです」

 セレモニー終了後の会見でも涙をこらえ、1分以上の沈黙が続いた。引退表明でも、日本シリーズ敗戦時にも、引退会見でも見せなかった涙。最後に初めて、寂しさが襲った。

 マウンドにひざまずいたのは、黒田流の儀式。現役20年のお礼だった。「最後の最後まで野球の神様はいると思って野球をやってきた」。走馬灯のように巡った記憶も、苦いものばかり。だがそばにはいつもファンがいて、ともに勝利を目指す仲間がいた。「本当に出来過ぎの野球人生」。この日、目の前に広がっていたのは、まさにそんな景色だった。

 午前中は、新井とともにオープンカーに乗り、広島の街をパレード。マツダスタジアムに戻って行われた優勝報告会は終盤、さながら黒田の引退報告会と化した。バックスクリーンに入団からの映像が流され、新井からは花束が贈られた。チームメートに15回胴上げされるサプライズも。黒田は「別に肩が痛かろうが関係ない。できるだけ目いっぱい遠くに投げよう」とグラウンドを1周しながらスタンドにサインボールを投げ入れた。

 「最後に世界一のカープファンの前でユニホームを脱ぐことができます。本当に最高の引き際になったと思っています。20年間、ありがとうございました」

 23日のファン感謝デーは参加しない方向で、背番号15は、この日が最後。黒田と広島の物語が、ここに完結した。【前原淳】