チームの危機をシンデレラボーイが救った。巨人篠原慎平投手(26)が負傷降板した先発高木勇に代わって3回からプロ初登板。この日最速150キロの直球を軸に3イニングを4安打無失点に抑え、育成出身ではプロ野球史上初となる初登板初勝利を達成した。中継ぎ強化で16日に急きょ支配下契約を結び、初マウンドも緊急登板だったが結果を出した。チームも22年ぶりの3試合連続無失点勝利で4連勝。連勝街道を走りだした。

 憧れ続けた舞台は、突然やってきた。1-0の3回、篠原にプロ初登板が巡ってきた。初回に先発高木勇が打球を直撃した時から肩はつくっていたが、まさか2回の攻撃でも高木勇が負傷し、3回に呼ばれるとは想像していなかった。「やるしかない」。腹をくくり、一塁側ベンチを飛び出した。緊張する暇もないほどのドタバタが持ち味を発揮させた。「一番自信がある」と自負する最速153キロの直球を信じ抜いた。いきなり1死一、三塁を招いても、谷内には直球勝負。三ゴロ併殺打に仕留めた。

 4回には山田に左前打を打たれたが、左翼石川の好送球で二塁タッチアウト。5回にも立岡の好送球でピンチの芽を摘んでもらった。3回4安打無失点でのプロ初勝利に「うれしいのひと言で表せないぐらいの感じ。野手の方の守備に助けられて運もあったかなと思います」と喜んだ。

 14年育成ドラフト1位で入団後、3軍生活が続いた。それでも信念は曲げなかった。「ストレートでプロの世界に入ってきた。そこを伸ばすしかない」。直球を磨くことに活路を見いだした。昨季2軍でリリーフとして頭角を現し、昨秋の1軍キャンプに抜てき。今季は2軍で9試合11イニング無失点と結果を残していた。

 吉報は突然だった。球団は4月の支配下登録には慎重だったが、沢村、田原ら右の中継ぎ陣が離脱した状況で、16日に急きょ支配下契約を結んだ。新しいビジター用のユニホームが間に合わない中、1軍に招集された。26歳の“オールドルーキー”の経験を信じてくれた結果が、育成で史上初のプロ初登板初勝利となった。

 試合終了後、高橋監督と記念撮影をする時にも“ハプニング”に見舞われた。ウイニングボールが手元になく、球団関係者が慌てて探してくれた。「一生忘れない思い出ができて鹿児島が大好きです。もっともっとレベルアップして、1軍で活躍できるように頑張ります」。篠原が力強く、突然に、サクセスストーリーの扉を開けた。【浜本卓也】

 ▼17日に育成選手から支配下選手登録された篠原が初登板で勝利投手。育成選手で入団した投手が初登板初勝利は、外国人を含めてプロ野球史上初。篠原はプロ3年目。巨人で入団3年目以上の投手が初登板を白星で飾ったのは、71年に4年目の関本が4月11日広島戦、3年目の島野が9月29日広島戦で記録して以来、46年ぶり。

 ▼巨人は16日中日戦から3試合連続完封勝ち。12年に0―0引き分けを挟んだ3試合連続無失点を記録しているが、3試合連続完封勝ちは95年7月18~20日以来、22年ぶり。この日は、初回に挙げた1点を6投手での守りきった。6人以上で完封リレーは球団史上4度目だが、6人で「スミ1完封リレー」は球団史上初。