父の日だった。「こういう日に勝たせてもらって、何かあるのかな」。小学6年の夏、交通事故によって父博美さんを37歳で亡くした。「僕はプロ野球選手になります」-。葬儀であいさつをした。野球を教えてくれた父との約束を果たした今、柳の思いはまた強くなっている。「応援してくれる人に恩返しをするために頑張る。自分を高めることが恩返しになるから」。

 それでもプロ入り後は苦しかった。3月に右肘痛を発症。「何やってんだと。悲愴(ひそう)感があった。でもケガした時期があってよかったと思えるようにした」。折れそうな心を奮い立たせ、地道なリハビリをこなし、3度目の先発でやっと初白星にたどり着いた。

 チームを連勝に導き、交流戦の最後を締めた。森監督は「精神的に崩れることがない。ほかの新人とは違う」と絶賛した。柳は「先発投手としてスタートを切れたと思う。満足せず、上を目指したい」と力強く躍進を誓った。【柏原誠】

 ◆柳裕也(やなぎ・ゆうや)1994年(平6)4月22日、宮崎・都城市生まれ。横浜で甲子園に3度出場。明大で3年春からエースを務め、4年春秋にリーグV。同年の明治神宮大会も制した。東京6大学で通算23勝、338奪三振。16年ドラフトで2球団から1位指名を受けて中日に入団。5月23日のDeNA戦で初登板。今季年俸は1500万円(推定)。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。