巨人坂本勇人内野手(28)が、右打者史上最速の通算1500安打を土壇場の同点打で決めた。5-6の9回2死一、三塁。一打同点、凡打なら試合終了の分水嶺(れい)で、一握り短く持ったバットでドリスの155キロを打ち砕き、三遊間を破った。節目の1本が起死回生の同点打となり、一塁上で右こぶしを力強く握った。その裏にサヨナラ負けしたため、節目の記録を勝利で飾れなかった。「速い球に振りまけないようにしていた。自分1人の力でやってきたわけじゃないので感謝の気持ちを忘れないようにしたい」と振り返った。

 積み上げた1500本で「安打」の奥深さを知った。1本目は07年9月6日の中日戦。1-1の延長12回に代打で登場し、高橋から決勝の2点適時打を決めた。残り1本で迎えたこの日の試合前、ヒーローインタビューで初々しく喜ぶ18歳の自分の写真を見て「細い! でも、今と4キロぐらいしか変わらないんですよ。特別、鮮明に覚えています。緊張というより頭が真っ白で」と懐かしんだ。

 あれから10年。主将であり主軸という大黒柱となった今、安打を打つたびに重みを実感する。自分のひと振りが試合を、ペナントの行方を左右する。「今、1本を打つのって本当に難しいと思うんです。コツがあったら教えてほしいですよ」と話しつつ、自分の1本が勝利に直結する以上の喜びはないことも知っている。「だから、頑張れると思う」。重圧を力に変え続け、1500本にたどりついた。

 28歳6カ月は史上2位のスピード到達。このペースなら2000安打も夢じゃない。「1歩1歩です」。まずは1501本目を、勝利に導く快音にする。【浜本卓也】

 ▼坂本勇が阪神13回戦(甲子園)の9回、ドリスから適時安打を放って達成。プロ野球123人目。初安打は07年9月6日中日21回戦(ナゴヤドーム)で高橋から。坂本勇は出場1354試合、28歳6カ月で到達。スピード記録は11年松井稼(楽天)の1233試合で、坂本勇の1354試合は16位になる。スピードでは10傑入りできなかったが、28歳6カ月は64年榎本(東京)の27歳9カ月に次いで2位の年少記録。右打者では64年小玉(近鉄)の29歳1カ月を抜いて最年少達成だ。通算3085安打の日本記録を持つ張本(ロッテ)は1359試合、29歳2カ月、通算2786安打のセ・リーグ記録の王(巨人)は1538試合、30歳4カ月で達成しており、坂本勇は試合数、年齢の両方で2人を上回った。