すごいで、このルーキーは! 阪神ドラフト5位の糸原健斗内野手(24)が大仕事をやってのけた。5回にプロ1号を放つと、同点の9回にプロ初のサヨナラ打。4長打で連敗ストップのG倒ヒーローとなった。虎は今季4度目のサヨナラ勝ち。プロ1号とサヨナラ打を同一ゲームでマークしたのは2リーグ制後、虎新人初の快挙だ。蒸し暑い日々が続くが、こんな熱い戦いなら、大歓迎だ。

 願いを込めて、糸原は駆けだした。「越えてくれ」。同点の9回裏2死一、二塁。マシソンが投じた高めの直球を迷わず、振り抜く。打球は中堅手が伸ばしたグラブを越えてぽとりと落ちた。サヨナラ二塁打となり、金本監督と強く抱き合って喜んだルーキーはお立ち台で「やりました! 自分の打撃をしました。最高です!」と絶叫した

 5回にはプロ1号もぶちかましていた。1点を勝ち越した直後の1死二塁から、山口俊の内角直球を捉えた。「感触は完璧だったのでスタンドまで届くと信じて走った。いい場面でホームランが出たことが素直にうれしいです」と、右中間席へ2ラン。流れを引き寄せる1発となった。

 この日は二塁打3本に1本塁打と、プロ入り初の4安打で3打点と大当たりだった。この活躍には金本監督も「よく練習しているし、振り込んでいる。その成果だと思う。糸原デーでしたね」と舌を巻いた。指導法については「平野コーチに任せている。恵一が一番、うれしいんじゃないか」と目を細めた。糸原も「教えてくださるので、(平野コーチに)結果で返したいと思っていた」と感謝の言葉を口にした。

 社会人野球のJX-ENEOS時代から始めたルーティンが、活躍の根底にある。「日記をつけるような性格ではない」と言うが、1打席ごとに欠かさずに「配球メモ」をつけている。「絶対にプラスになると思って」と社会人時代から、メモをつけ始めた。どんなに試合が遅くなっても、1日を振り返ってから眠りにつく。だからこそ、勝負の場面で生きてくる。

 前日まで宿敵巨人を相手に連敗を喫していた。それも、2試合で奪った得点は2点だけ。「3タテを食らったら痛いので、絶対にやってやるぞと思っていた」と、守備が持ち味の男が打撃でも応えた。

 首位広島とのゲーム差は8・5ある。それでも、こんな闘志満々な戦いが、虎にはある。【真柴健】

 ◆糸原健斗(いとはら・けんと)1992年(平4)11月11日、島根・雲南市生まれ。開星(島根)で甲子園に3度出場。明大では3年時に三塁手でベストナイン。JX-ENEOSを経て、昨年ドラフト5位で阪神に入団。4月1日の広島戦でプロ初出場し、翌2日に初安打。今季年俸は800万円(推定)。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。

 ▼阪神のルーキー糸原がサヨナラ安打。新人のサヨナラ安打は昨年5月21日の高山(阪神)以来。2リーグ制後、阪神の新人では7人目(8度目)で、このうち巨人戦では01年6月20日の赤星以来2人目だ。