広島のサビエル・バティスタ内野手(25)が一振りで試合の流れを変えた。1点を追う7回1死二塁で代打出場。1ボールからDeNA今永の甘く入った変化球を迷わず捉えた。思い切りバットを振り抜くと、打球は左翼席後方の防球ネットを直撃。推定飛距離140メートルの特大弾は、劣勢の試合をひっくり返す大きな、大きな1発となった。

 「琢朗さん(石井打撃コーチ)にバックスクリーンに本塁打を狙えと言われた。チャンスをもらっているので、そのチャンスでいいパフォーマンスをしたいと思っている」

 持ち味の長打力を発揮した。今季12安打中、7本塁打。先発から外れる試合が増えても、代打本塁打は4本目とチームの大きな武器となっている。通訳兼ブルペン捕手のクレートとともに上がったお立ち台でも「自分の武器はパワー。そのパワーであそこまで飛んだです」と胸を張った。

 活躍の裏には球団の配慮もある。一昨年まではスペイン語圏の選手でも英語を話せる選手は多いため、英語の通訳2人がスペイン語圏の選手もカバーしていた。だが、一昨季在籍していたベネズエラ人のグスマンが同じスペイン語を母国語とするドミニカ共和国の練習生がいる2軍で生き生きした表情を見せていたことで、ドミニカ共和国出身のルナが加わった昨季から2軍ブルペン捕手のクレートを通訳として1軍に同行させるようになった。バティスタとは同じアカデミー出身。寮と球場の行き帰りも一緒。食事するのも一緒。サポートを惜しまない。この日もお立ち台でたどたどしい日本語で広島ファンをキュンキュンさせた。バティスタも「いいコンビだと思う。楽しい」と笑う。

 大きな仕事をした大砲に、緒方監督も「ナイスゲーム。バティスタがよく打ってくれた」とたたえた。今季29度目の逆転勝利で、引き分けを挟み4連勝。豪快弾が、広島の勢いを加速させた。【前原淳】