スタンドには、なじみがいっぱいいた。ロッテのドラフト2位酒居が、オリックス相手に4安打2失点完投でプロ初勝利。チームの連敗を4で止めた。「素直にうれしいです。ここで育ってきたんで」と笑った。大阪・枚方出身。両親、親戚、知人ら50人近くの前で堂々と投げきった。

 京セラドーム大阪はプロ初だったが、勝手知ったる庭だ。枚方シニアでは、関西の大会で優勝した。大阪ガスでは、日本選手権で2年間通算36イニング無失点。「マウンドが硬くて高い。僕に合っている」。プレートの三塁寄り、左足をスッと上げ右足1本でピンと立つ。そこから投げ降ろすスタイルにマッチする。登板が決まり「念願の京セラです」と漏らしたほどだ。

 直球狙いの相手打線に対し、序盤は変化球多め。後半に直球を増やした。したたかに、寸断した。前々回4日の楽天戦は足がつりかけ、8回で自ら降板。直後に逆転負けで白星が消えた。この日は7回から腕が張ったが、完投できた。「勢いがあれば勝てる世界。でも、苦しい時にどうするか。今日の初心を思い返せるように」と言った。今季で退任する伊東監督は「やっと若い人が出てきた。来年が楽しみ」と優しく笑った。ロッテの未来を開く右腕の誕生だ。【古川真弥】

 ◆酒居知史(さかい・ともひと)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪・枚方市出身。樟葉南小1年で捕手として野球を始め、同3年で投手転向。枚方シニア、龍谷大平安、大体大、大阪ガスと進み、社会人1年目の都市対抗で久慈賞と若獅子賞を受賞し、日本代表にも選ばれる。178センチ、80キロ。右投げ右打ち。