快挙への歩みは力強さを増すばかりだ。阪神鳥谷敬内野手(36)が中日20回戦(ナゴヤドーム)の延長11回に決勝打を放ち、チームに4連勝を運んできた。2本の二塁打と合わせ、今季初の2試合連続猛打賞となり、これで2000安打には残り14本だ。チームは60勝到達で今季最多タイの貯金12。首位広島との8・5ゲーム差は変わらなかったが、逆襲へ白星と安打を積み重ねていく。

 興奮冷めやらぬ三塁ベンチ裏。4時間20分の激戦を制した直後、金本監督は鳥谷を絶賛した。上気した笑顔、まくし立てるような早口が、決勝打が持つ価値の大きさを示していた。

 金本監督 ベテランが大仕事をしてくれた。普通の決勝点とは違う。拙攻の中でね。今日はこういう日なんかな、という中で決めてくれたのもうれしかった。

 同点の11回表2死二、三塁。岩瀬の初球スライダーをいとも簡単にミート。勝ち越し打をライナーで左前に弾ませた。「次は右打者なので勝負してくるかな、と。なんとか勝ちたいと思っていたので良かった」。10回終了時点で先頭打者を7度出塁させながら14残塁3併殺打。鳥谷自身も4回、8回に先頭で放った二塁打が得点に結びついていなかった。どことなく嫌なムードが漂っていただけに、値千金の一本となった。

 レギュラー白紙でスタートした17年。慣れない三塁で失策を重ねていたオープン戦期間中も、北條ら若手選手に笑顔で声をかけ続ける姿があった。プロ1、2年目のころ、打率3割を記録した直後だった4歳上の藤本(現2軍守備走塁コーチ)から遊撃レギュラーを奪った時の経験が、そうさせたのだという。

 「あの時、藤本さんは普通に接してくれた。自分が逆の立場になった時、同じようにできないのは人としてどうかと思うしね。全員が優勝を目指してやっていく中で、若い選手に余計な気を使わせたくないから」

 勝利を追い求めるためなら身を粉にできる。そんな男だから4連勝が何よりうれしい。今季3度目、ナゴヤドームに限れば4年ぶり3度目となる同一カード3連戦3連勝。貯金を今季最多タイの12に増やし、納得顔だ。

 「もともと、暑い夏は好きなので」。2戦連続猛打賞を決め、8月の月間打率は両リーグトップの4割1分3厘まで跳ね上がった。「すぐにスローペースになるよ」と冗談めかしたが、通算2000安打までいよいよ残り14本。「1日も早く達成できるように頑張ります」。ヒーローインタビューで珍しく宣言してしまうぐらい、上り調子のようだ。【佐井陽介】

 ▼鳥谷の2試合連続猛打賞は今季初で、15年9月26、27日広島戦以来、2シーズンぶり15度目。これで通算133度目の猛打賞。阪神在籍時では、3位和田豊にあと1とした。