笑顔のエースが、戻ってきた。楽天則本昂大投手(26)が、今季12勝目を飾った。前回登板の3日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では、9回にサヨナラ打を食らい涙を流した。敗戦から学び、粘りの投球で7回4安打1失点に抑えた。自身の連敗を3でストップさせ、チームの本拠地10連敗の記録も止めた。

 則本は、言った。「お待たせしました。とりあえず、勝てて良かったです。みなさん見ての通り、情けないピッチングでしたが、何とか勝てました」。お立ち台に上がり、満面の笑みでファンに叫んだ。上を向き、涙をこらえるように見えたが「今日は泣きません」と笑みがはじけた。

 1週間前のどん底から、はい上がってきた。3日ソフトバンク戦。8回まで散発3安打に封じ、完璧と言える内容だった。悲劇は最後に待っていた。9回2死一、二塁からサヨナラ打。マウンドに崩れ落ち、ベンチで肩を震わせた。涙は止まらなかった。体をしばらく、動かせなかった。ただ、腐らなかった。

 則本 勝ちは、時の運も必要。そんなに思い詰めることもないって。ゲームを作ることだけを考えて。それをまた、続けようと思います。

 涙から学んだ。ドンと構えると決めた。だから、少しのことでは崩れない。4、5回だけで4四球を与えた。5回が終わると試合中にもかかわらず、ベンチ裏のブルペンに入った。傾斜を使い、体のバランスを微調整。6回以降は1人の走者しか許さなかった。「最近の中では、一番良くなかった」と言いながら、7回1失点にまとめた。

 後輩の姿も、立ち直る材料となった。3日ソフトバンク戦でチームは10連敗となった。だが、ルーキー藤平が5日の日本ハム戦で勝利し、チームの連敗を止めた。則本は「若手から学ぶこともある。僕自身も投球を見直すきっかけとなった」と奮い立ち、自身3連敗中だった負の流れを断ち切った。

 自身、チーム、ファンにとっても待望の1勝となった。本拠地Koboパーク宮城では、8月10日の日本ハム戦以来となる白星となった。則本は「ここ何試合か見ていてチームの疲労は、ピークが過ぎたと思う。残り試合を全力で勝っていきたい」。エースが、復活した。【栗田尚樹】

 ◆3日ソフトバンク戦VTR 8回までソフトバンク打線を3安打、無得点に抑えるも、0-0の9回2死二塁から柳田敬遠直後のデスパイネに中前打を浴びサヨナラ負け。則本はマウンド上で崩れ落ち、ベンチに戻ると顔をタオルで覆ってしばらく動けなかった。この敗戦でチームの連敗は、05年以来となる10まで伸びた。