離れない。DeNAが巨人に1-0で勝ち、3位に並んだ。7月1日以来の2番を打った梶谷隆幸外野手(29)が4回、決勝の19号ソロ。先発井納から抑え山崎康まで、6投手の小刻みなリレーも決まった。大事な試合でアレックス・ラミレス監督(42)の積極的な采配が的中した。

 ラミレス監督は悩んでいた。9月に入って4勝8敗と、波に乗れず巨人との直接対決を迎えた。「何かを変えなくては-」。梶谷の調子が上向いていた。相手先発のマイコラスも苦にしない。「今日がいいタイミングだ」。練習を見ながら、どこに置くか考えた。

 悩みの種はもう1つあった。ヒットマン宮崎の急性胃腸炎。練習に出てこなかった。「宮崎がダメなら梶谷は5番。2番は石川だな」。でも、本当に置きたい場所は2番だった。「桑原が当たっているときはスモールベースボールができるが…今は、梶谷を2番にすることで一番効果が出る」。宮崎の無事を確認し、オーダーを固めたのは打撃練習が終わったころ。こだわって組み上げた打線を潔くバラして、開幕当初の形に戻した。

 2番梶谷は完璧な仕事をした。4回の第2打席、マイコラスの外角に沈むチェンジアップに反応。ヘッドを返して右中間最深部に運んだ。その他の打席は3三振。ラミレス監督は「三振をたくさんするか、いい仕事をするか、どちらか」。大きな勝負は、ふさわしい役者が主役を張る。調子と特徴を見抜いていた。

 眼力は継投にも表れていた。6回無失点の先発井納を「突然崩れることがある」と交代。7、8回は2人をつぎ込んで封じていった。「試合前の準備。考えていた。8回はエスコバーも用意していた。全員が素晴らしいピッチングをしてくれた」と納得した。練り上げた打ち手がことごとく決まった1-0。年に何度もない会心の勝利を、剣が峰で決めた。【宮下敬至】