虎が広島に甲子園胴上げを許した。優勝マジック1で乗り込んできた鯉のリーグ連覇を阻止するには勝つしかなかったが、1点を争う展開で競り負けた。悔しいV逸となったが、10月に開催されるクライマックスシリーズ(CS)で雪辱を果たしてみせる。

 真っ赤に染め上げられた左翼席に背を向け、金本監督は一塁側ベンチ裏へ階段を下りた。カープファンから発せられる歓喜の雄たけびが甲子園全体に響き渡る。「そりゃあ、もうマジック1だから、どこかで決まるんだから…」。目の前で優勝を決められた直後。指揮官は悔しさを押し殺し、静かに現実を受け止めた。

 先発メンドーサが1回にあっさり先制点を与え、主導権を握られた。7回裏に代打陽川が同点弾を放つも、8回表に3番手岩崎が2四球を与え、代わった桑原が勝ち越し打を浴びる。「う~ん…今日の3失点は(4回も含め)全部四死球からでしょ? ちょっともったいないね」。悔やんでも悔やみきれない様子だった。

 17年。昨季25年ぶりにリーグ制覇して経験値を高めたカープは、投打において層の厚さが際立っていた。「一番(力の差を)感じたのは得点力。ウチとは150以上、違う。一気に畳み掛ける打線のつながりとか。本塁打数も全然違うし、足も違う。そこ(投手力)に力の差はあまり感じないけど、あの打線を抑えこめる投手力を作っていかないと、やっぱり勝てない」。指揮官はそう振り返る。

 今季の対戦成績はここまで9勝14敗1分け。後半戦は3勝9敗1分けと大きく負け越しているが、9敗のうち1点差が4試合、2点差は2試合ある。接戦をモノにするためには、強力カープ打線を相手に無駄な四球だけは避けなければならない。だからこそ、この日の負け方に悔いが残る。

 甲子園の左半分を広島ファンが埋め尽くした一戦。虎は98年横浜にやられて以来、聖地で負けての胴上げを許した。「経験…っていうかね。彼ら(若い選手たち)がどう感じているか。何かを感じてほしいというのはありますね」。この屈辱を晴らす舞台はまだ今季残っている。

 まずは甲子園でのCSファーストステージ開催を1日も早く決めたい。金本監督は会見の最後、「もう2位確保、そこですね」と力を込めた。CSファイナルステージで再びカープとぶつかるためにも、目の前の1試合1試合を勝ちきっていく。【佐井陽介】

 ◆甲子園での他球団の優勝決定 直近は02年9月24日の巨人。試合は阪神が勝利したが、同日にマジック対象のヤクルトが敗れたため巨人優勝が決まった。甲子園で相手球団が阪神に勝利しての優勝となると、98年10月8日の横浜以来。