大卒2年目右腕が念願のプロ初勝利だ。日本ハム吉田侑樹投手(23)が、オリックス21回戦(札幌ドーム)で4度目の先発マウンドに立ち、自己最長の7回を5安打1失点の好投で初白星を手にした。1度も1軍昇格できずに過ごしたルーキーイヤーの悔しさを胸に、飛躍を誓った今季終盤で記念の1勝を挙げた。

 初めてのお立ち台で天然キャラがさく裂した。吉田が夢見心地でヒーローインタビューに答えた。初勝利の感想という意味でウイニングボールの感触を問われたが「投げやすそうです。重みはあります。重たそうです」とボールの握り心地を説明。それには本拠地ファンも「???」。両親がスタンドで見守る中での勝利に「えー、ご両親、勝ちました!」と喜びの声を届け、場内の笑いと拍手を誘った。

 覚悟を決めた4度目の先発だった。「今日はラストチャンスだと思って投げた」。5回先頭中島から144キロで空振り三振を奪うなど「自分はストレートのキレで勝負。それでどんどん押せた」。それまで自己最長は5回だったが、7回まで任された。意気に感じつつも「もう代わってくれと思った」と笑うほど、疲労感はいっぱいだった。そんな姿に栗山監督は「7回投げきっての初勝利に意味がある。本人にも言った。力み過ぎないでいい球が来ていた」とたたえた。

 ファームで鍛え続けた1年目。昨年の春季キャンプの紅白戦で、吉井投手コーチは「吉田が(新人投手で)一番良かった」と評価したが、昨季日本一に導いた先発陣に割って入るには、まだ力は足りなかった。2軍伊藤総合兼投手コーチは「打たれだしたら止まらない。打たれても打たれても投げさせることで忍耐力をつけた」。2軍戦でチーム3番目に多い97イニングで経験を積み、土台を築き、今季の出番に備えた。

 1年目から登板を重ねている井口、8月にプロ初勝利の上原、長打力発揮の横尾ら大卒同期が発奮材料だった。「何とか見返したろと思っていた」。上原、井口とは大学日本代表メンバーで同部屋だったこともあり、プロ入り前から親交があった。この日、9回を抑えた井口から受け取ったウイニングボール、横尾と立ったお立ち台。吉田にとって価値あるものだった。

 カブス上原と同じ大阪・寝屋川市出身で東海大仰星OB。「地元では英雄。まだまだですけど負けたくない。『雑草魂』は胸に刻んでます」と、偉大な先輩に続く活躍を誓う。「先発ローテで2ケタ勝たないと」と思い描く3年目へ。1勝目はスタートラインだ。【保坂果那】

 ▼2年目の吉田がプロ初勝利。日本ハムで今季プロ初勝利をマークした投手は、外国人を除き吉田で5人目。6月2日阪神戦(甲子園)でルーキー玉井が中継ぎで初白星。同11日巨人戦(札幌ドーム)では、米国から戻った32歳の先発村田が日本球界初勝利。同14日中日戦(ナゴヤドーム)では巨人から移籍の公文が5年目で初勝利を手にした。8月20日西武戦(札幌ドーム)では15年ドラフト1位上原が5度目の先発で初白星。