楽天の背番号「31」美馬学投手が、プロ初の10勝目を挙げた。「31」歳を迎えた自身の誕生日を今季初の完封で飾った。8月5日ロッテ戦(Koboパーク宮城)以来の勝利で、チームを7月26日以来の3連勝に導いた。これで2位西武に2ゲーム差。本拠地CS開催へ向けて、走り続ける。

 ヒーローインタビューが終わると、美馬のもとに突然松井裕が現れた。手元には、背番号と同じ年齢「31」がデコレーションされたバースデーケーキが用意されていた。「誕生日に完封とか、格好良すぎです。尊敬しています」の祝福メッセージを聞くと、美馬はさらに頬をゆるめた。

 次の瞬間。満面の笑みだった表情が、一気に真っ白になった。サプライズで登場した阿部、福山から人生初の顔面パイを食らった。「全然気付かなかった。うれしいですね。ずっと10勝の壁を越えられなくて。でも誕生日にこうして、勝てて良かったです」と髪の毛についた生クリームを拭き取った。

 8月5日に昨季マークした自己最多の9勝を挙げたが、以降は4戦で勝ち星に恵まれなかった。去年の姿がよぎった。9勝をマークしてから、3戦全て勝ち星から遠ざかった。「何か変えてみることも必要かな」と周囲のアドバイスを素直に受け止めた。則本に勧められ、グラブの色を黒から青に変更。与田投手コーチから「楽しんで笑って投げろ」と言われ、表情からリラックスに努めた。

 プロ7年目でようやくつかんだ自身初の2桁勝利。絶妙な立ち上がりから、散発3安打無失点に封じた。「とにかく低めに集めることだけを意識して」。高さには細心の注意を払った。スライダー、カーブを要所に、武器のシュートで攻撃の芽をつぶした。本拠地では、日本一となった13年のCS以来の完封勝利。レギュラーシーズンでは、初となった。

 もっている男の活躍で、チームは7月以来の3連勝を飾った。2位西武が敗れたため、ゲーム差は「2」に縮まった。残り17試合。西武との直接対決は、2試合ある。美馬は「今まではふがいないピッチングでした。これからは全部勝ちます」と力強く言った。前日18日サヨナラ勝ちからのハッピーバースデー完封。本拠地でのCS開催を、誰も諦めていない。【栗田尚樹】

 ▼楽天美馬が昨年3月30日のロッテ戦以来、プロ2度目の無四死球完封勝利を挙げ、初のシーズン10勝をマークした。美馬は昨季9勝止まり。10勝目がかかった試合は昨季が3試合0勝2敗、今季も4試合0勝3敗で、通算7試合勝利がなかった。