小柄な選手の星になる。立命大(関西学生)の東克樹投手(4年=愛工大名電)は身長170センチ。決して大柄とはいえないが、ポテンシャルは並外れている。最速152キロの直球と多彩な変化球、正確なコントロールを武器に、今秋ドラフト1位候補までのし上がった。リーグ史上初となる、個人で2度のノーヒットノーラン達成という偉業を引っさげて、プロの世界に挑むつもりだ。

 小さなサウスポーが、スタンドからの視線を独り占めした日が2度ある。最初は3年時の春季リーグ・京大戦。もう1つは4年になった今年の春季リーグ・関大戦だ。東は1度目のノーヒットノーランから約1年後に再び快投。リーグ30度目で複数回の無安打無得点試合達成は初の快挙だったが、その投球の質は全く違うものだった。

 2年夏から3年の6月にかけて、東は左肘の炎症に苦しんだ。「『このまま落ちていくんやろな』としか思わなかった」。その時期は、肘を痛める怖さをぬぐい去ることができず、だましだましの投球だった。最初の快挙は、痛みが残っている状況で、笑いながらも「早く打ってほしかったです」と振り返るほど。快投を狙えるコンディションではなかった。

 だが、今年5月の2度目の偉業を成し遂げた時は違っていた。左肘の不安が消え、エースとしての自覚も芽生えた。17奪三振。球速も当時の最速148キロを一気に4キロ更新し、152キロに。「球速が上がって成長を感じられた」。自身に、まだ伸びしろを感じた。プロの2文字を現実的に捉え始めたのもその時期。「納得のいくリーグ戦だった。上を目指してやりたいと思った。プロに行くなら上位で行きたい。きっかけのあるこの年に挑戦したい」。成長が、背中を押した。

 小学生時代は150センチ、中学時代は160センチと恵まれた体格ではなかった。あこがれのプロ野球選手は、中学時からヤクルト石川。「(その存在で)勇気をもらっていた」。石川は身長167センチ。同じように小柄な左腕は、活躍する道しるべだった。そして、自らもそんな存在に、と思う。「(身長は)これからの方が言われると思う。成長し続けることが、生き残る1つだと思う」。小さな体の奥に、強い信念が隠されている。【磯綾乃】

 ◆東克樹(あずま・かつき)1995年(平7)11月29日、三重県生まれ。三重北小では三重クラブ野球少年団に所属し、大池中では四日市トップエースボーイズに所属。愛工大名電では2年秋から背番号1で、甲子園は2年春夏、3年夏に出場。立命大では1年春から出場。今年8月に行われたユニバーシアード競技大会の日本代表にも選出された。最速152キロ。170センチ、74キロ。左投げ左打ち。