最大級のラブコールだ。広島が25日、都内のホテルでスカウト会議を開いた。10月14日に広陵・中村奨成捕手(3年)の1位指名を公言。「奨成愛」は日に日に深まり、1位指名に迷いはない。緒方孝市監督(48)は鈴木誠也外野手(23)に匹敵する素材とべた褒めだ。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」は今日26日午後5時から。中日の1位指名が浮上し、競合が予想される中、運命の赤い糸は、果たして。

 緒方監督は優しい表情で奨成愛を口にした。宿舎への帰り道。小雨を気にするしぐさもなく、次々に広陵・中村へのラブコールを繰り出した。自発的に発した言葉にすべてを集約させた。「将来的に鈴木誠也に次ぐ、右の長距離を打てる打者になる。クリーンアップを担える素材。なかなかいない」。指揮官が中村に言及するのは初めて。深い愛がにじんだ。

 地元のスター選手を放っておくわけにはいかない。夏の甲子園で1大会の個人新記録となる6本塁打をマークし、俊足強肩も広島のスタイルにぴったり。緒方監督は「甲子園という大舞台で力を発揮できる潜在能力。地元広島の子で、カープファンとも聞いているからね」と続けた。深まり続ける愛を語る表情は、どこまでも柔和だった。

 約2時間に及ぶスカウト会議では、抽選になった場合など複数のシミュレーションを行った。候補選手が少なく、松田オーナーは「難しいドラフトになる」。球団では中村に最大3球団が競合することも想定。外れ1位指名の候補は即戦力投手としたが、それでも中村の1位指名にブレはない。

 右の長距離砲は長年のチームの課題でもある。これまでも素材型選手を指名してきたが、現状で1軍戦力として顔を出す選手はいない。それも捕手で、俊足、強肩、カープファン。チームには入団1年目で左打ちの好打者、伸び盛りの坂倉もいる。刺激し合って伸びてくれれば、松田オーナーをして「15年くらいは捕手の心配はしなくていい」。

 他球団と競合した場合は、緒方監督がくじを引く。とはいえ抽選箱の前に立つ順番は最後。残り物には福がある-。「よその球団にとられないことを祈る」と指揮官。奨成愛よ、届け-。【池本泰尚】