ソフトバンクの「ポストシーズン打線」がつながって、「SMBC日本シリーズ2017」第1戦を制した。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの突破を決めた第5戦のオーダーと同じ、1番柳田悠岐外野手(29)3番アルフレド・デスパイネ外野手(31)で臨み、10点を奪って大勝した。前日27日の監督会議で予告先発採用を拒否された工藤公康監督(54)だったが、DeNA投手陣を打ち込んで留飲を下げた。

 予告先発がなくても関係なかった。工藤監督が自信を持って書き込んだオーダーが、いきなり機能した。初回だった。CSファイナル最終戦で復帰した柳田が、この日も1番で打席に入った。井納の3球目。スライダーを詰まりながらも中前にはじき返した。2番今宮がきっちり送ると、同じくCSから打順継続の3番デスパイネが、左翼越えの二塁打を放って先制した。

 「打ったのは直球。自分の役割は走者をかえすこと。それができてよかった」。パ・リーグで本塁打と打点の2冠は表情ひとつ変えずに言った。先行逃げ切り-。先取点を挙げた試合はシーズン73勝9敗。データは正直だ。2回には長谷川勇が中堅右へ2ラン。立ち上がりからグイグイと押しまくった。

 一気に決めた。5回は先頭今宮が歩くと、すかさず二盗。敵失も誘って三進すると、またもデスパイネが中前に運んだ。ヤフオクドームの大歓声もチームの背中を押した。2つの押し出しでさらに加点。2死満塁から1番柳田が2点打を放って勝負を決めた。

 「(1番は)打席が多く回ってくるぶん、大変だけど、それ以外は変わらない。結果はたまたま。自分の打撃をしようと思った。(右脇腹の)痛みはなかったのでよかった。いいところに飛んでくれた」。今宮の2点三塁打も飛び出し、この回だけで大量7得点。力の差を見せつけた。

 6年前。工藤監督はDeNAの初代監督就任の要請を受けた。選手の育成方針など、球団との考えが合致せず「破談」となった。相手は、そのDeNA。2年ぶりの日本一奪回へ、リーグ94勝を挙げた驚異的な戦いぶりを、因縁の球団にそのままぶつけるだけだ。

 「柳田君が最初からしっかりとヒットで出たおかげでみんなの緊張もほどけた。普段通りの野球をやっていきたい。野球は楽しくやらないと。明日も楽しく明るく、元気にやっていきたい」と工藤監督。脳裏に「敗戦」の2文字はない。圧倒的な強さを見せつけ一気に頂点に駆け上がる。【佐竹英治】

 ▼第1戦の2桁得点は05年ロッテ以来6度目。過去67度のシリーズで先勝したチーム(△○を含む)は42度優勝しており、V確率は63%。第1戦で2桁得点は過去5チームのうち4チームが日本一になっている。

 ▼ソフトバンクが5回に7点を挙げ、10-1で第1戦に勝利。シリーズで1イニング7点以上は07年第3戦中日が1回に記録して以来9度目で、ソフトバンクは初めて。第1戦で1イニング7点以上は94年西武が7回に記録して以来2度目。

 ▼ソフトバンクは11年第7戦から本拠地のヤフオクドームで7連勝。シリーズの同一球場連勝は70年第1戦~73年第5戦巨人が後楽園球場でマークした10連勝が最多で、他に7連勝以上は87年第2戦~91年第1戦西武の西武球場8連勝、95年第5戦~15年第3戦ヤクルトの神宮球場8連勝があり今回が4度目。この日は初回に先取点を挙げ、これで先制した時のソフトバンクは11年第3戦から13連勝。シリーズで先制試合に13連勝は87年第2戦~91年第6戦西武の12連勝を抜く新記録。