阪神が「鉄人養成バット」を導入した。秋季キャンプ初日に、野手全員が91センチ、1キロの長尺バットを持参し、打撃練習で使用。金本知憲監督(49)が現役時代に愛用していたもので、打撃向上を狙って指令を出した。

 安芸のメーン球場に、異様な光景が広がった。ティーやフリー打撃に臨む野手のバットが長かった。中谷が、大山が、高山が…。1人や2人ではない。野手全員が秋季キャンプに持参していた。打撃向上を狙い、金本監督が指令を出していた。「僕自身も使っていた。他球団に聞いたら、使っているというしね」。現役時代には91センチ、1キロのマスコットバットを使って、フリー打撃で力強い打球を放っていた。いわば、「鉄人養成バット」だ。野手それぞれが契約するメーカーに作らせていた。

 長尺バットには、2つの利点がある。指揮官は言う。「長いバットはバランスが必要ですからね。体をうまく使わないと振れない。重いバットは振る力をつけるため。正田さんも重いのを振っていた。1キロ以上のね」。首位打者を2度獲得した広島の先輩を例に挙げた。理にかなった打撃フォーム。さらに力強いスイングを身につけてほしい。その思いから、提案した。江越は「ちゃんといい形で振らないと、振れない。力をつけるのもあります。あそこまで長いのは、(今まで)使っていない」と感想を漏らした。

 昨秋のキャンプで課した猛練習は、今年も健在だった。居残り特打は1時間半にも及び、安芸ドームで行われた連続ティーは日が暮れるまで続いた。金本監督は選手の取り組む姿勢に手応えを感じている。「こっちが決めたメニューだが、みんな、積極的に食いつくように、自主的にやっている印象を受けた」。生え抜き野手を鍛え上げることは就任以来のテーマである。今年も指揮官にブレはない。量をこなしながら、さらに長尺バットを握らせた。さらなるレベルアップへ、地獄のキャンプは始まったばかりだ。【田口真一郎】

 ◆バットの形状 プロが使う平均の長さは33・5インチ(約85・1センチ)から34インチ(86・4センチ)と言われる。一般的に重さは900グラム程度。公認野球規則では、最も太い部分の直径が2・61インチ(約6・6センチ)以下、長さ42インチ(約106・7センチ)以下と規定されている。阪神では、初代ミスタータイガース藤村富美男が「物干しざお」と呼ばれる約94センチのバットを使用し、本塁打を量産した。