阪神は6日、大阪市福島区の電鉄本社で臨時取締役会を開き、12月1日付人事で四藤慶一郎球団社長(57)が退任し、阪神電鉄取締役で阪急阪神ビルマネジメント代表取締役・副社長執行役員の揚塩(あげしお)健治氏(57)が新球団社長に就任すると発表した。編成トップの球団本部本部長に谷本修球団常務(53)が就任するなど、82年の球団史でも異例のフロント大改造を決定。13年ぶりのリーグ優勝はもちろん、常勝軍団作りへの本気度を示す“アゲアゲ新体制”を整えた。

 V逸した阪神が、大幅なトップ人事に踏み切った。この日、電鉄本社で臨時取締役会を開き、四藤球団社長の退任をはじめとする12月1日付人事を固めた。例年から1カ月前倒しになった球団首脳人事は、総勢10人の変更を伴い、82年の球団史をひもといても超異例の大刷新となった。

 その象徴として球団の新トップに就くのは、電鉄本社取締役で阪急阪神ビルマネジメント代表取締役・副社長を務める揚塩氏だ。真弓監督時代の09~10年に営業担当として球団常務などを務め6年8カ月ぶりの球団復帰になった。

 揚塩氏は西宮市の球団事務所で就任会見を行い、緊張の面持ちで第一声を発した。「歴史と伝統のある阪神タイガースの社長、大変重責と感じ、身の引き締まる思いでございます」。そう切り出し、信念を持って常勝軍団づくりにあたる意気込みを示した。

 「金本監督の1年目が借金12、今季が貯金17ですから、実力がついてきたなというのは実感してます。ただ、圧倒的な力の差で勝つところまでは、発展途上なのかなと思っています。1、2軍監督としっかりと話し合い、チーム力アップに携わっていきたいです」

 12年間優勝から遠ざかっている阪神だが、新社長になる揚塩氏は、頼もしいエピソードをもつ。四藤社長が「非常に強い運をもった方でございます」と紹介。星野監督の03年、岡田監督の05年にリーグ優勝を遂げた際、揚塩氏は甲子園球場の球場長として、ネット裏本部席で両監督の胴上げを見届けている。阪神史上、球場長として甲子園で2度の優勝を経験したのは14代球場長だった川口永吉氏と揚塩氏の2人しかいない。強運の持ち主として“もってる男”揚塩氏は「ファンが今一番望んでいるのは優勝、日本一だと思いますので誠心誠意、身を粉にして頑張りたい」と意気込んだ。

 また、谷本常務が新ポストの副社長に就き、球団本部本部長として編成責任者に就任する人事も固めた。今後はFA、外国人、トレードなどチーム強化策が遡上(そじょう)にあがる。揚塩氏と谷本氏の2トップらはきょう7日、秋季キャンプ地の高知・安芸に入り、金本監督と補強についての協議を重ねる。常勝軍団作りへ、異例ずくめのV体制を整えた。【寺尾博和】

 ◆揚塩健治(あげしお・けんじ)1960年(昭35)1月31日、大阪府堺市生まれ。富田林高では器械体操部に所属。大阪府大経済学部在学中は準硬式野球に親しんだ。83年4月に阪神電鉄に入社し、06年7月にレジャー事業部長に就任。09年4月に阪神タイガース常務取締役に就任した。11年4月から阪急阪神ビルマネジメント取締役・常務執行役員に。16年4月に阪神電鉄取締役、今年4月に阪急阪神ビルマネジメント代表取締役・副社長執行役員に就任した。