493日前に味わったほろ苦い思い出は、プロの舞台で興奮に変わっていた。6回に実現した、日本ハムのドラフト1位、清宮幸太郎内野手(18=早実)対DeNAドラフト5位の桜井周斗投手(18=日大三)。清宮にとっては、高2の秋の東京大会決勝で5打席連続三振を喫した天敵だ。2死一、二塁から、前を打つ大田に敬遠四球が宣告され、回ってきた打順。ネクストバッターズサークルで準備をしていた背番号21は「レガーズを当てていて気が付かなかった。デッドボールかと思いました」と、苦笑いする。「2アウトになったのでどうかなって思ったけど、対戦できて良かった。楽しかったです」。胸を高鳴らせた。

 高校時代に全5打席でスライダーを決め球とされただけに「スライダーしか狙ってなかった」と、雪辱を期していた。1球目で内角高めのスライダーを振らされ、2球目は甘く入ったスライダーを打ち損じてファウルに。3球目、低めに決まった133キロ直球に、まったく反応できなかった。「もう、ごめんなさい」。試合後、報道陣にペコリと頭を下げて悔しがる姿は、まだ18歳。「相変わらず、走者を出してから抑える。いつか、打ちたいですね」と、3球勝負を挑んできた18歳の左腕に闘争心をかき立てた。

 2日連続先発フル出場したこの日は、全4打席で三振に倒れた。そのうち3つは、変化球でカウントを整えられて直球勝負。プロの変化球に「真っすぐを打ちにいきながらというのは難しい。駆け引きが大事」と思い知らされる日々だ。

 オープン戦は19打席連続無安打となり、試合前のフリー打撃で新しい形のバットを試すなど試行錯誤が続く。「なかなか仕留めきれない。打ったと思っても、前に飛ばずにファウルになっちゃう」と、金属から木製バットへの変化を痛切に感じているようだ。栗山監督は「思ったようにいかないのがプロ野球。素晴らしい経験。これを力に変えてくれると思う」。天才スラッガーの“脱皮”に、期待した。【中島宙恵】

 ◆16年秋季都大会決勝VTR 早実が逆転サヨナラで日大三に勝利し、11年ぶり10度目の優勝を決めた。3番で出場の清宮は、日大三先発桜井の前に1、3回とスライダーを空振り三振。5回の第3打席は見逃しの3球三振で、7回も外角低めのスライダーを振らされて三振に倒れた。4-4の9回に日大三・金成の2点二塁打でリードされるも、その裏に西田の適時打で1点差に迫り、さらに清宮の打席で桜井が暴投して同点に追い付く。清宮はその打席も低めのスライダーに空振り三振も、続く4番野村の1発でサヨナラ勝ち。桜井は清宮からの5打席連続を含む14三振を奪うも、勝利はならなかった。