宮城出身のヤクルト由規投手(28)が、東日本大震災後では12、15年に続き3度目の「3・11」のマウンドに上がった。広島とのオープン戦(福山)に先発し、最速147キロの直球を軸に4回3安打3失点。「毎年のように3月11日に投げさせてもらって、勝手に気持ちが入る。いい投球を見せられたら一番良かった」と悔しさをにじませた。

 自然に気持ちが高揚した。試合前に行われた黙とうでは、三塁側ブルペンで目を閉じつつ「自然と野球から離れた気がする」と故郷に思いをはせた。東日本大震災では仙台の実家が被災し、知人も亡くした。福山では翌12年の「3・11」に登板し、打球が直撃して3回途中3失点で降板した。そんな苦い記憶は「3・11」の使命感が消し去った。「この日は忘れてはいけないと常に思っている。いろいろ感じながら投げた」と無心で腕を振った。

 震災のあった11年に右肩痛を発症。手術、育成契約をへて、先発ローテーションを取り戻す戦いに挑み続ける。「やっと1軍の舞台で投げられるようになって、仙台、東北の人たちに勇気を与えられるチャンス、恩返しできるチャンスなんじゃないかなと思っている。シーズンでいい投球をして、元気に投げている姿を届けられたら」。故郷東北とともに、完全復活への歩みを続けていく。【浜本卓也】