聖地での“プロ1号”をど真ん中に決めた。甲子園での伝統の一戦で巨人岡本和真内野手(21)が今季4号3ランを放った。3点リードの5回無死二、三塁、阪神高橋遥の直球を強振。浜風を切り裂き、バックスクリーンに放り込んだ。3安打4打点猛打賞。打点王に君臨する若き主砲が、チームを今季初の同一カード3連勝に導いた。

 打球がどんどん小さくなっていった。連日の満員札止めとなった甲子園。黒土と緑の芝生が映える聖地で、岡本が高校時代からの成長を披露した。5回無死二、三塁の絶好機。阪神のルーキー左腕高橋遥の142キロ直球を捉えた。やや高めに浮いた失投を迷わずに強振し「逆風だったので入らないかなと思っていた。まさか入るとは思わなかった」。十分の滞空時間で深緑のバックスクリーンに放り込んだ。

 球界屈指のスラッガーとバットで“会話”した。12日のDeNA戦(東京ドーム)の試合前にロッカーに2本のバットが届いた。前日11日に守備時に一塁ベース上であいさつを交わした筒香のバットだった。13日の広島との試合前から、さっそくバックヤードでのマシン打撃で振り込んだ。「すごくうれしいです。僕の形と少し似ていた。イメージも少しだけ湧いてきた」と野球少年の顔に戻った。

 憧れのライバルとマッチレースを繰り広げている。3月31日から2戦連発で先手を奪うも、8日に筒香が2発で追いついた。前夜21日に5号で2本差とされたが、この日の1発で食らいついた。「やっぱりシングルより、長打の方がいいと思っています。大きいのを打てるに越したことはない」と役割として本塁打の意識はある。ただ、最優先は当然ながらチームの勝利。4回1死三塁から勝ち越しの決勝適時打もマーク。7回無死一塁からは逆方向への右前打でチャンスメーク。ダメ押しにつなげた。

 甲子園の申し子ではない。むしろ、屈辱の2文字が強い。高校通算73発も、甲子園は春夏2度の出場で2本塁打のみ。2回戦進出が最高成績だ。「周りが言うほど、自分の中にいいイメージはない。1軍でもそんなに打ててない。だからもっと打ちたいと燃えさせてくれる場所なんです」。豪快なバックスクリーン弾で聖地の魔物を打ち消した。「(高校時代から)成長していなかったらまずいので…」。岡本の存在感が、どんどん大きくなってきた。【為田聡史】