守備についた2試合連続のヒーローに左翼スタンドから拍手が降り注いだ。DeNA筒香嘉智外野手(26)が、延長10回に6号勝ち越し2ランを打ち、試合を決めた。いつもなら、守備固めでベンチに下がる10回裏。ラミレス監督が「ファンがスタンディングオベーションで声を掛けたがっていたので」と、粋な演出で最後まで送り出した。

 延長10回、筒香は前の打者の大和のプレーに心打たれた。自打球を受けて左膝を痛めながら、ヘッドスライディングで一塁に飛び込んで内野安打とした。さらに筒香の第5打席の3球目、中日田島の暴投で二塁に進んだ。「大和さんの姿を見て、感じるものがあった。最低でも三塁に進めるために右方向に強く振った」。3-1から甘く入った外のスライダーを強振。ライナー性の軌道で右中間スタンドへ運んだ。

 負ければ3位転落のゲームを2試合連続で制した。ともに主砲が試合を決めた。だが、打席での心持ちは、自分が決めてやるという野心よりも、後ろにつなぐという犠牲心がまさっている。「チーム全員で戦うという気持ち。勝ちにつながる一打はやっぱりうれしい」。汗だくになって言った。

 試合前の練習の際、ベンチ前に中日松坂がやってきた。知り合いの家族との記念撮影をお願いされて快諾し、談笑した。その横浜高の11歳上の先輩と、今日30日に直接対決する。宣戦布告はしなかった。「それはできません。プロに入ったときは、イメージがわかなかったけど、僕自身すごい楽しみ。本当に素晴らしい投手の方。いい勝負ができたらいい」。マウンドで躍動する松坂にあこがれた少年時代の筒香。かつての記憶を思い起こしながら、打席に立つ。【栗田成芳】