勝てなかったが、負けなかった。21日のオリックス戦(甲子園)。阪神は延長12回ドローで「日本生命セ・パ交流戦」を終えた。交流戦は6勝11敗1分け。最後も力投したドラフト1位馬場皐輔投手(23)にプロ初先発初勝利をつけることはできなかったが、金本知憲監督(50)のリクエスト成功、糸井嘉男外野手(36)の一時逆転打&同点弾と見せ場は十分。最後まで見せた執念は、今日22日に再開するリーグ戦につながるはずだ。

 表情ひとつ変えなかった。土壇場で同点にした喜びも、ミスを取り返した気持ちもない。ただ自身への怒りだけが、糸井の体を支配していた。1点を追う9回。先頭で打席に立つと、オリックスの守護神増井の初球をとらえた。低めに来たボールを半端ないパワーで左中間スタンドへと突き刺した。走りだすのが遅れるほどのフルスイング。6年連続2桁となる10号同点ソロに、気持ちを込めた。

 ミスの後の打席。集中力が違った。同点に追いつかれた後の8回2死二塁の守備で、目測を誤った。怪力を認めるオリックス吉田正の打球。低いライナーに、思わず前へ出た。しかし…。打球はノビにノビた。ジャンプしたが捕り切れず頭上を越え、これが適時三塁打に。逆転を許した。金本監督は「真芯で捉えた低いライナー。難しい打球だよ。かばうわけじゃないけど」とフォローしたが、糸井は悔しさであふれていた。

 追いついた本塁打も、失った点も糸井なら、試合を動かした一時の逆転打も糸井だった。6回1死一、三塁では福留が空振り三振。このとき二盗を試みた熊谷もアウト判定だった。だが金本監督がリクエストを要求し、セーフに覆った。判定通りなら回ってこなかった打席で、期待に応えた。2死二、三塁でオリックス黒木の135キロに反応。右前2点適時打に広報を通じて「馬場が一生懸命投げていたので、なんとか気合で打ちました」と振り返っていた。

 チームは延長12回の激闘の末3-3で引き分け。交流戦全日程を6勝11敗1分けで終えた。雨天中止の次戦の“不敗神話”は8勝1引き分けと継続。金本監督は「前向きにとらえましょうか。よく追いついたので」。休日を挟まず、今日22日からはリーグ戦が再開。首位広島と3連戦だ。良くも悪くも糸井に沸いた夜。4番が虎の逆襲を引っ張っていくことに変わりはない。【池本泰尚】