阪神が今季ワースト5連敗で2季ぶりのリーグ単独最下位に沈んだ。驚異の粘りで5点差を追いついたが同点の9回、復帰登板した守護神ドリスが5失点。金本知憲監督(50)はショックを隠せず、懸命に言葉を探した。金本阪神誕生後、首位広島と3年連続再開リーグ戦で対戦も8戦全敗。ゲーム差は今季最大7・5差に広がったが、過去2年も一気に引き離されてV逸の分岐点となっており、大きな試練に立たされた。

 虎党の悲鳴は力なく、左翼鯉党の大歓声にかき消された。勝ち越し点を許した直後の9回表1死満塁。広島鈴木の大飛球が左翼ポールに直撃して、外野芝生にポトリと落ちた。マウンドのドリスが表情を失い、一塁ベンチの空気は凍りついた。鈴木には4月にも小野がグランドスラムを浴びており、同一年に同一選手に2度満塁弾を浴びるのは球団史上初の屈辱。熱戦は、あまりにもショッキングな形で幕が引かれた。

 試合後、金本監督は疲れ切った表情で痛恨のシーンを振り返った。「今年は多いよな。投内連係ができていないよな。それがまさか決勝点とは…」。同点の9回表、守護神ドリスがいきなり左中間二塁打を浴びた。さらに無死二塁から投前犠打を一塁へ悪送球し、あっさり勝ち越し点を許したのだから、言葉にも落胆の色がにじむ。最後は衝撃的な1発まで献上。あまりに切なすぎる負け方となった。

 打線は5点あったビハインドを7回裏に追いつき、反発力を発揮していた。だが、同点の8回裏1死満塁で3番福留、4番糸井が凡退すると、流れは再びカープの側へ。指揮官は8回裏を振り返り、「まあ、結果的に(流れは)そうなったかも分からんけど」と言葉を絞り出すしかなかった。

 1/3回を来日最多タイ、2年ぶりの5失点で降板したドリスは「ぶっつけ本番」が懸念されていた。高熱による体調不良で14日に出場選手登録を抹消され、この日再登録されたばかり。実戦登板は9日ロッテ戦以来、実に15日ぶりだった。とはいえ、適時失策からの満塁アーチ被弾は想定外。守護神は「力もなければ、バランスも崩れた情けない投球になってしまった。次、頑張ります」と肩を落としてクラブハウスに消えた。

 空気は重苦しい。守護神復帰が裏目に出て、リーグ戦再開直後の広島3連戦に3連敗。交流戦から引き分けを挟んで今季初の5連敗となり、2シーズンぶりとなるリーグ単独最下位に沈んだ。借金は今季ワーストの6まで膨らみ、首位カープとのゲーム差も今季最大の7・5まで広がった。

 虎は3年連続で交流戦明けに首位広島と対決したが、毎年1勝もできず計8戦全敗。夏を待たずにゲーム差を広げられるパターンに、今年こそあらがわなければならない。【佐井陽介】