北海道に本拠地を置く日本ハムが、沖縄で今季初のサヨナラ勝利を飾った。ソフトバンク11回戦(沖縄セルラー那覇)は、1点を追う9回2死、田中賢介内野手(37)の今季初打点となる右前適時打で追いつくと、最後は満塁で大田泰示外野手(28)が押し出し四球を選び劇的勝利。南国の空に、歓喜の声が響いた。

 今季初のサヨナラ勝ちに、37歳のベテランの声はかすかに震えていた。9回2死満塁から、最後は大田がストレートの押し出し四球を選んで決着。直前に起死回生の同点打を放った田中賢も、歓喜の輪に加わった。「1月に宮古島で自主トレをしているのですが、今日はその応援団も来ていたので、良かったです」。ここまでプロ生活を支えてくれた人たちの笑顔が、心にしみた。出場機会は減り、苦しんだ今季の初打点。プロ17年目のベテランにとっても格別な1日となった。

 アルシアの本塁打で1点差に迫った9回。2死まで追い込まれたが、一、二塁で田中賢が代打出場した。「とにかく、後ろにつなぐ。何とか塁に出れば、かえって来られると思っていた」。2球で追い込まれても、そこからがベテランの真骨頂。フルカウントまで持ち込み、ソフトバンク森の8球目を捉えた。外角144キロ直球を引っ張り、打球は右前へ転がった。敗色ムードを、一変させた。

 黄金期を支えてきたベテランの存在は、やはり頼りになる。昨季わずか107試合出場にとどまり、オフには1億2500万円の大減俸(推定)を経験した。今季もこの打席がまだ55打席目。それでも崖っぷちで奮闘している巧打者は、しびれる場面でのヒーローにふさわしい。栗山監督も「さすがだよね。ああいう場面でベテランらしさが出る」と最敬礼だ。

 お立ち台で沖縄の魅力を聞かれると「人の温かさ」と、真っ先に答えた。「この気温より、はるかに温かいと思います。沖縄開催。初めての試みでしたけど、ファイターズ大成功!」。ドラマチックな2連勝に、南国沖縄の夜が熱く燃えた。【中島宙恵】