オリックスのラオウが仰天の一撃だ。3年目杉本裕太郎外野手(27)が自身初の満塁本塁打を放った。1点リードの4回1死満塁。楽天辛島の127キロ変化球をバックスクリーンに突き刺した。「最低でも外野フライと思って打席に入った。まさか入るとは…。自分でもビックリです」。この日、今季初の出場選手登録。7番右翼でスタメン出場し、今季1号が値千金のグランドスラムだ。

 漫画「北斗の拳」のラオウに憧れを抱く。グラブには、おなじみのせりふ「わが生涯に一片の悔いなし」の刺しゅうがある。本家の210センチには及ばないが、身長は190センチ。福良監督は「ラオウの1発が大きかった」と、チーム内ですっかり定着したニックネームで褒めたたえた。

 今春のキャンプでは1軍に抜てきも、終盤の紅白戦でサインミス。2軍落ちした。2軍でも打率1割7分3厘、0本塁打と苦しむラオウが仙台に呼び寄せられたのには理由があった。昨季9月の仙台、左腕辛島からプロ初安打を初回先頭打者弾でマーク。外国人選手を除けばプロ野球3人目となる快挙だった。前日10日のウエスタン・リーグ広島戦で左腕高橋樹から3安打。緊急昇格となった。

 「今日打てなかったら終わりというくらいの気持ちでした…」。試合後にチームメートから歓喜のシャワーを浴びた杉本は今にも涙がこぼれそうだった。死のふちからはい上がったラオウが放った渾身(こんしん)の一撃でチームの連敗も3でストップ。貯金2で順位も3位タイに浮上。14年以来、4年ぶりの貯金ターンだ。【桝井聡】

 ◆杉本裕太郎 すぎもと・ゆうたろう。1991年(平3)4月5日、徳島・阿南市生まれ。小1で野球を始め、軟式野球部に所属していた中学3年時はエースで3番を任され、四国大会3位。徳島商では1年夏に甲子園出場も出番なし。高校通算12本塁打。青学大、JR西日本を経て15年ドラフト10位でオリックス入団。190センチ、94キロ。右投げ右打ち。