2020年東京オリンピック(五輪)開幕まで24日で、あと2年となった。初の金メダル獲得を公言する野球日本代表・侍ジャパンの稲葉篤紀監督(45)はリーダーに巨人坂本勇を指名した。
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東京五輪の開幕まで、ちょうど2年。サッカー・ワールドカップで沸いた日本を、2年後は野球で熱狂させたい。小学校時代にサッカー部に所属していた稲葉監督は、日本戦を欠かさずチェック。若手とベテランが一体となった西野ジャパンには、稲葉ジャパンのテーマに掲げる「結束力」に通じる部分があったとみている。
「ここという時のベテランは、すごく大事。それをすごく感じました。若いだけのチームでもダメですし。2年後、ベテランになっている選手って誰だろうってすごく考えました」
本田や長谷部のようにチームを引っ張る存在になれる選手は? 数秒間思いを巡らせた。
「(巨人)坂本選手ですね。WBCも2大会出てるし、国際経験豊富。彼がチームを引っ張っていく存在になる期待感を持っています。司令塔じゃないですけど、例えば試合に出なくても選手をサポートしてくれるとか。北京五輪の時の宮本慎也さんがそういう役目で、すごく選手をまとめてくれた。監督、コーチとのパイプ役でもあった」
稲葉監督は選手として08年北京五輪、09、13年WBCに出場した。豊富な国際経験の中、08年の宮本、09年のイチローらチームリーダーと接してきた。勝負どころで仲間に厳しい言葉を投げ掛け、時には背中で引っ張る。その役割を2年後、31歳になる巨人坂本勇に期待する。
東京五輪の期間中、日本はプロ野球シーズンを中断するが、大リーグは中断しない。大谷、田中、ダルビッシュら日本人大リーガーの招集は極めて難しく、メンバーは“国内組”で編成する。その投手陣の中心は、就任時からぶれない考えを貫く。
「(巨人)菅野投手は、今の日本のエースだと思っています」
日本が誇る最強投手陣。先発候補は菅野に加え、ソフトバンク千賀、楽天則本ら常連組が挙がる。その中で前半戦まで両リーグ唯一の防御率1点台を誇った、侍ジャパン未経験の33歳のベテランの招集について聞かれ、興味を示した。
「(楽天)岸投手が、なぜ今まで代表に選ばれなかったかというと(滑りやすい大リーグ仕様の)ボールが合わなかったんです」
東京五輪はNPB球とほぼ同じ「滑らないボール」を使用する。岸のカーブ、さらに精密なコントロールは大きな武器になる。
「あとは年齢的なものですね。2年後、今のスピードが落ちていなければ」
金メダル獲得のため、若手とベテランの融合を進めていく。五輪本番まで日本代表を招集できるのは公式戦がない毎年3月と11月の残り4回。今秋の日米野球までは選手を試す時期と位置付け、期待する若手に右の強打者と新人左腕の名前を挙げた。
「巨人の岡本選手も非常に打ってますし、オリックス田嶋選手は(ソフトバンク)和田選手のようなボールの出どころの見づらさがある。タイミングが取りづらい。国際大会で見たい選手ではあります」
メンバー構成を見ると遊撃手は巨人坂本勇、広島田中、二塁手は広島菊池、ヤクルト山田哲、西武浅村、一塁手は西武山川、日本ハム中田ら脂の乗る常連組がそろう。だが、昨年のWBCまでソフトバンク松田が守った“ホットコーナー”は世代交代が進んでいない。昨秋は広島西川、阪神大山を招集したが、代表定着には至っていない。
「全体的に見ると、サードがどうしても、ですね。岡本選手はファーストをやってますけど、サードもできますし、チャレンジするのはありかと思います。(西武)外崎選手もオールマイティーにどこでもできる。すごく重要な選手になってくると思います」
五輪代表メンバーは、WBCより4人少ない24人の予定。08年北京五輪では投手10、捕手3、内野手7、外野手4の構成だった。
「例えばピッチャーを11人入れるとなったら、野手は13人しか入れない。9人レギュラーで、4人しか控えがいないんです。この控えがすごく大事。選ぶのがすごく大変だと思います」
代走、代打、終盤の守備固め…。捕手を2人制にして、今は外野が本職の元捕手、日本ハム近藤を「第3の捕手」として招集するプランも持つ。外野はDeNA筒香、ソフトバンク柳田、西武秋山が主力として固まりつつある中、盗塁、四球数でリーグトップクラスの“一芸選手”に興味を示した。
「(日本ハム)西川選手は非常に僕の中で注目している選手。やっぱり走れる。走るだけじゃなくて、打つ方も選球眼がいい」
19年秋、開催国の日本以外の国は東京五輪予選を兼ねる世界野球ランキング上位12カ国が参加するプレミア12を経て本番に向かう。
「来年のプレミア12は勝ちにいきたい。19年は試すというより、勝ちにいくメンバー。私の一番の目標はオリンピックの金メダルですが、日の丸をつけて戦うということは常にNO・1を目指さないといけない」
長いようで短い、残り2年。今日24日は開幕戦の舞台、福島県営あづま球場を視察する。慣れないグラウンドの細部をチェックし、戦う準備を進めていく。【取材・構成=前田祐輔】