西武が大敗した前夜の嫌な流れを断ち切り、ソフトバンクに圧勝した。作新学院出身で16年夏の甲子園優勝エース、今井達也投手(20)が7回2失点の好投でプロ2勝目を挙げれば、大阪桐蔭出身の森友哉捕手(22)と岡田雅利捕手(29)が2年目右腕を支えた。甲子園の1回戦で激突する両校OBが活躍し、貯金は再び今季最多タイの18。2位日本ハムとのゲーム差を2・5に広げ、今日から直接対決に臨む。

 初めて登る7回のマウンドで、今井は闘争心を振り切った。ソフトバンク先頭の柳田をカーブ2球で追い込むと「球界を代表するバッターから三振を狙える」。カウント2-2からの8球目、思い切り腕を振った。コースは外いっぱい。ストライクからボールへと鋭く落ちる143キロの高速チェンジアップ。空を切らせ、ほえた。2死から四球を出したが、最後は今宮をスライダーで空振り三振。背番号と同じ1並びの111球目だった。

 「柳田さんへのチェンジアップ。あの高さが効果的だと思いました。感覚を忘れないうちに、ブルペンやキャッチボールで練習していきたい」

 勝利後は冷静になっていた。手応えをつかんだ1球を振り返った。

 1軍デビューを目指していた今春、2軍でチェンジアップに取り組んだ。甲子園優勝まで上り詰めた2年前までは「直球とスライダー、カーブで抑えられていた」が、猛者ぞろいのプロで左をいかに封じるかが課題だった。最初は「抜く」意識が強すぎて体の開きが早くなり、制球を失った。「直球と同じように」振ることで、ものにした。成長は投球イニングにも表れた。これまでは6回が最長。前日に「7回、8回はいきたい」と誓った。森と岡田のリードにも支えられ、公約を実現させ「自信になります」と素直に喜んだ。

 成長を感じたのは辻監督も同じだ。6月に初登板で初勝利したが、その後の勝てない時期は「若さで向かっていくところがない」と映った。評価は一転。「昨日14点も取られた相手。自信にして、次は完投、完封を目指すだろう。信頼を勝ち取って欲しい」と期待を高めた。今井も「まだまだ若いので、コース、コースで打たせて取ると気にするより、大胆にいかないと」と自覚。10年ぶり優勝へ向け、生きの良い右腕が生まれた。【古川真弥】