eスポーツのプロ野球「パワプロ・プロリーグ」が10日、東京・渋谷で開幕した。日本野球機構(NPB)が共催し、プロ12球団に3選手ずつが所属。会場のベルサール渋谷ガーデンには数百人が詰め掛け、インターネットでは1万人以上が同時接続して動画を視聴する盛況となった。セ・リーグの開幕節は、中日が得失点差で首位に立った。パ・リーグは、西武が楽天に3連勝し、単独首位に立った。
第2試合で中日を操作した「でらナゴ!」は4回、1点を勝ち越し、なお無死一塁、1番に起用したビシエドの「確定ホームラン」(打った瞬間、本塁打と分かる演出)が出ると力強くガッツポーズをした。「気持ち良かったです。思わず出ちゃいました」と笑みがこぼれた。
簡単にやってのけるが、確定ホームランは容易なことではない。コース、タイミングともにぴったり合った時だけ出る演出。左手でコースを合わせ、右手でタイミングを合わせる。「左手で三角を描きながら、右手で四角を描くようなものです」と説明する。
打順の組み替えもパワプロならではの魅力だ。大会前にビシエドをキープレーヤーに指名。「打てる1番。上位で点を取るために」と実際のプロ野球ではあり得ないオーダーで、昨年のパワプロ全国大会王者「マエピー」から金星を挙げた。
開幕前日の9日は、チーム3人で合宿に臨んだ。午前9時から午後3時まで「m.o.m.o」こと人力舎所属の若手芸人、嶋崎幹の家賃5万円の家で特訓に励む、はずだった。「でらナゴ!」が1-7で敗戦後、突如停電。嶋崎の電気代払い忘れにより電気が止められ、コンビニで支払いを終えて復旧まで30分を過ごした。これが転機となった。
停電以降「でらナゴ!」の調子が急上昇、連勝が始まった。メンバーの「ふが」宅に移動し、午後11時を回った最後の試合でもサヨナラ3ラン。勢いそのままに当日を迎えた。「持ってるまでは言わないけど、良い流れだと思った」と停電パワー? で成長した。
1試合で4盗塁を決めるなど積極的な采配も目立った。「盗塁を決めたことで相手にプレッシャーをかけられたと思う」と満足顔。昨年覇者擁するヤクルト相手に第1試合で勝利した「ふが」を含め、2勝1敗で首位に立った。「正直うれしいけど、まだ始まったばかりなので通過点。生まれも育ちも名古屋なのでeスポーツからも中日ドラゴンズを出していけるように頑張りたい」。今季中日は5位に終わったが「パワプロ」では好発進を切った。【久永壮真】
◆日程 eペナントレース(11月10日~12月9日)はセ、パに分かれ総当たりのリーグ戦を行う。1つの対戦カードは両チーム3人ずつによる3ゲーム。全5カード計15ゲームの勝率で順位決定。eリーグ代表決定戦(12月16日)はペナントレースの2、3位がファーストステージ(S)で対戦し、その勝者と1位がファイナルSで対戦。優勝チームがe日本シリーズ(来年1月12日)に進出する。
◆チーム 参加チームは3人の競技者と1人の管理者で構成。競技者はeドラフト会議で指名される。
◆試合環境 ソフトはPlayStation■4版「実況パワフルプロ野球2018」。各チームは所属球団を使用。試合は規定イニング6回、延長9回まで。DH制はセなし、パあり。
◆表彰・報酬 試合出場で1日1万円、eペナントレース出場で7万円、eリーグ代表決定戦出場で5万円、同ファイナルS出場で13万円、e日本シリーズ出場で38万円、優勝で107万円。e日本シリーズ優勝なら1人177万円を稼げる。個人タイトルの賞金はMVP50万円、打率、本塁打、打点、防御率、奪三振が各15万円。総額は1200万円。
【eスポーツ解説】 格闘技など対戦型コンピューターゲームで競うe(エレクトロニック)スポーツ。海外では億円単位の賞金大会が開かれ、プロ選手が活躍している。アジア大会では今夏のジャカルタ大会で公開競技として行われ、サッカーゲーム「ウイニングイレブン」で日本が優勝した。22年の中国・杭州大会では正式競技になる。五輪でも競技としての採用が検討されている。
日本では19年の茨城国体で都道府県対抗が行われる。今年、日本eスポーツ連合が設立され、プロ化などに向けた取り組みが始まったが、韓国や欧米に比べると後れを取っている。ゲーム=遊びのイメージから抜け出せず、高額賞金を設定した大会は開けないなど法律上の制約も普及の足かせになっている。
世界のeスポーツ市場は21年には1500億円超に拡大するとみられ、スポンサーに名乗りを上げる企業も出始めている。
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