稲葉監督が「勝利にこだわる」と宣言した日米野球は、5勝1敗で全日程を終えた。就任して約1年半、20年東京オリンピック(五輪)への折り返し地点に立った。日本の強みについて「スモールベースボールとは言いません。スピード野球。今回はスチールを絡めた得点もあって、スピードは非常にいいものを見せてくれた。プラス、ホームランもあった。パワーも世界で勝っていくためには大事」と言った。

今大会は柳田、秋山ら東京五輪の招集が確実視される選手に加え、「試すことのできる1年」と成長を期待する若手を招集。全試合打順を組み替え、計7盗塁を決めた。約1年8カ月後の本番に向けて、各選手の適性を見極めた。

日本の課題に挙がる米国人投手特有の打者の手元で“動くボール”を6試合体験した。序盤苦しんだのは4番として期待された山川、岡本ら。前半3試合を2安打で終えた山川は「日本人の真っすぐを真っすぐ打ち返すことはできるけど、外国人の変化するボールに合わない。器用じゃない。真っすぐだと振って、捉えたと思ってもゴロになる」と悩んでいた。後半戦はスローボールを引き付けて打つ練習で感覚を磨いた。

「経験」と「慣れ」。代表経験豊富な秋山はスピードある「強いボール」対策へ、右足の上げ幅を変え、重心を下げてタイミングを調整した。初代表の山川、岡本にとって「引き出し」が増えた6試合になれば、日本にとってプラスになる。不調の間も稲葉監督は「これも経験、勉強」と繰り返し「少しずつ慣れて対処できるようになった」と収穫に挙げた。

MLB選抜の投手陣は今季7勝が最多で、一流投手ばかりが集まったわけではない。終盤の粘りで逆転勝利が3試合あったが、本番でトップレベルのクローザーから点を取るのは難しい。WBCとは違い、日本のボールに似た滑りにくいWBSC球を使用する東京五輪。開幕戦で好投した岸は、米国打線に有効なカーブを軸にできる投手の可能性を示した。投手が最少失点で粘り、攻撃につなげる原則は変わらない。

稲葉監督は就任後、昨秋から3大会で計56選手を招集した。前年成績で選考する3月開催のWBCに比べ、8月開催の五輪はシーズンを中断するため、その時点で好調な選手を選出できる。多くの選手に代表を経験させることで、最終選考時の選択の幅を広げてきた。「試す年」から、19年は「勝つ年」へ。本番モードに突入する。【前田祐輔】