南場オーナーに話をうかがったのは、ちょうどCS争い佳境のときだった。しかも3位を争う巨人との直接対決前。場所はディー・エヌ・エー本社が入る渋谷のヒカリエだった。オーナーも東京ドームで試合を視察予定。大一番のゲームを前に時間をつくってもらい、7年前の買収劇を中心に、振り返っていただいた。

ときおり話はシーズンを戦うチームに“脱線”しながら、勝つ喜びの一方で勝てないやるせなさが、行間からにじみ出る。すべては野球愛とチーム愛があるから、自然とこみ上げる本音なのだろう。言葉を選びながらていねいに話すときもあれば、あっけらかんと笑顔で話す南場オーナーは、人間味を漂わせるから、遠い存在のようで親近感を勝手に抱いてしまう。

取材終盤、進行中のゲームに心なしかそわそわしながら時計を確認。東と菅野の投げ合いという展開を聞き「だんなに祈っています。どうか勝たせてくれって。特に今日」。手を合わせ願うように東京ドームへ直行。いちファンのような心を忘れずに、プロ野球界と向き合っている。【栗田成芳】