今年の野球界もいろいろなドラマがあった。日刊スポーツの野球担当記者の印象に残った「言葉」を紹介する、年末恒例企画の「言葉の力」。喜び、悲しみ、怒り…、勝負師たちの本音が凝縮した数々の言葉から、2018年を振り返る。今回は「パ・リーグ編」です。

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▽日本ハム清宮「これまで打席を重ねてきて打てたホームランなので、まぐれではないと思います」(5月9日オリックス戦。プロ初打席から7試合24打席目で飛び出した待望のプロ初本塁打。高校球界の怪物からプロのスラッガーとして1歩を踏み出した=中島宙恵)

 

▽ソフトバンク内川「つくづく残念な男。4番としてあそこで試合を終わらせてしまうのが残念な男だと思う」(5月6日オリックス戦。通算2000安打へ残り1本。3点差を追う9回2死満塁。1発逆転の場面で右翼ライナーに倒れ、本拠地での大記録達成ができずに出た言葉。内川らしい表現で4番の責任、ファンの期待に応えられない悔しさを表現していた=石橋隆雄)

 

▽ロッテ井上「出身者として元気を与えたい思いはある。広島に届けばいいんですが」(7月9日西武戦、2カ月ぶりの4番に座り、豪雨に見舞われた地元広島を勇気づける先制3ラン。2日前の日本ハム戦は、河川の氾濫で一時孤立した家族の安否が分からないまま戦っていた=鎌田良美)

 

▽ソフトバンク嘉弥真「モニターが消えたなんて初めて。マウンド行ったら走者がいた。肩はつくっていたので問題なかった」(8月3日オリックス戦の7回、ヤフオクドームの館内放送の映像が乱れ、ブルペンのモニターも映らず状況把握できなくなった。それでも登板した嘉弥真は打者2人を抑えプロの意地を見た=石橋隆雄)

 

▽日本ハム中田「僕らの試合で、どこまで勇気が与えられるか分からないけど自分たちには野球しかない。試合を見ているどころじゃない人もいるかもしれないけど、ファイターズが勝って良かったね、という試合をしていきたい」(9月9日楽天戦。同6日未明に北海道で大地震が発生した。中田を含め選手も札幌で被災した。当事者でありながらもプロ野球選手としての使命を再確認する言葉に胸を打たれた=木下大輔)

 

▽ロッテ福浦「井口監督を何とかマリンで胴上げしたい。優勝をみんなで分かち合いたい。来年もやるつもりです、まだまだ」(9月22日、通算2000安打を達成した福浦は直後の会見で現役続行宣言。大記録をゴールとせず、応援歌の歌詞どおり「不屈の闘志」を示した=鎌田良美)

 

▽オリックス福良監督「選手も真剣にやっている。ファンも真剣に応援してくれている。これで来年もやりますと言うわけにはいかない」(9月25日、慰留を続ける球団に辞意を申し入れて了承される。勝負の世界で生きてきた男が自ら進退を決断。潔さを感じた=桝井聡)

 

▽西武松井「ほとんどが苦しかったり、悔しかったり。少しの喜びを得るために、苦しさがあるのかな」(9月27日、引退会見で日米通算25年間の現役生活を振り返った。数々の栄光の裏に、どれだけの努力、苦しみがあったか。プロの厳しさを痛感した=古川真弥)

 

▽オリックス小谷野「病気のおかげで野球選手として強くなれた。病気になれて良かったなと。それが僕の個性」(9月27日、引退会見。06年にパニック障害を発症。病気と向き合いながら闘ってきた現役生活を振り返り、小谷野という選手の強さを感じた=桝井聡)

 

▽ロッテ岡田「ただがむしゃらにボールを追いかけ、グラウンドを駆け回るプレーでした。ホームランを打ったこともありません。なのに10年間プレーできました」(10月8日の引退試合で。「エリア66」と言われた広い守備範囲でチームを支えた職人のプロ野球人生を象徴する言葉。同日は60打席ぶりの安打で3安打猛打賞を記録した=鎌田良美)

 

▽日本ハム矢野「自分の目で、いいもの悪いものをしっかり判断して、いいと思えばそれを続けたり、悪いと思えば捨てればいい。自立して自分でしっかり判断していくことが大事かなと思います」(10月10日、引退会見で後輩へ最後のメッセージ。若手中心のチームに必要な考え方を、愛情いっぱいに伝えた=田中彩友美)

 

▽西武辻監督「悔しいです。まさか今日、2018年のシーズンが終了するとは考えてもいませんでした」(10月22日、リーグ優勝しながらCS敗退が決まり、セレモニーでファンの前で男泣きした。絞り出した言葉から指揮官の気持ちが伝わってきた=古川真弥)

 

▽楽天岸「今年は星野さんが亡くなられて、優勝を目指していた年だったのに、情けない」(シーズン終了後の10月下旬、口数が少なく、多くを語らない岸が、感情をあらわにした言葉。今季にかけてきた思いが、ひしひしと伝わった=栗田尚樹)

 

▽西武浅村「悩みすぎて、毎日生きてる感じがしません。FAしたら悪いことしてるみたいで、ファンに申し訳ないです」(11月7日、FA権行使を表明する前に記者にぽつりと言った。一本気な男が漏らした本音だと感じた=古川真弥)

 

▽楽天枡田「プロの世界では駄目だったけど、次の世界では1億円プレーヤー目指すわ」(12月4日、現役引退を決めた数日後、ボソッと言ったひと言。普段から言い訳をしない男。強い決意を感じた=栗田尚樹)

 

▽楽天渡辺直「イーグルスで野球をやるっていうことが最高の幸せ」(12月15日、昨オフに西武で戦力外を味わい、今季8年ぶりに古巣の楽天に復帰した男が、契約更改で語った素直な思い。渡辺直しか言えない言葉だと思った=栗田尚樹)