巨人原辰徳監督(60)が8日、客員教授を務める千葉・勝浦市の国際武道大で講義を行い、長野久義外野手(34)内海哲也投手(36)に勝負師としてのエールを送った。長野はFAで獲得した丸佳浩外野手(29)の人的補償で広島入りすることが決まり、内海は炭谷銀仁朗捕手(31)に代わって西武に移籍した。ベテラン流出をチャンスに変える若手の台頭を望みながら、足し算だけではない勝負の世界の厳しさを説いた。

生え抜きベテラン選手のダブル流出という衝撃から一夜明け、原監督は未来ある大学生の前で自らの考えを語り始めた。

「FA制度というのはプロ野球選手にとって、特に優れた選手にとっては宝物なんですね。そういう選手の1番手として、ジャイアンツは丸選手を評価した」

左の長距離砲と捕手の炭谷は、5年ぶりの優勝を目指すチームの補強ポイントに合致した。だから獲得した。代償として、長野と内海を失った。

「私も心境的には残念です。でもルール上、仕方ない。28人のプロテクトで彼らを守ることができなかった。しかし相手球団は評価し、長野、内海を取った。野球人として2人にエールを送る気持ちは変わらない。長きにわたってともに戦った同士。一抹の寂しさはあるけど、戦う勝負師としては、まったく変わらないというところは、お互いが思うところだと思います」

原監督自身、チームの立て直しのために「頭の片隅にもなかった」と言う3度目の監督を引き受けた。チームが勝つために、最善を尽くすよう考え抜いた。

「勝負の世界は足し算ばかりでない。人生歩んでいるとよく分かります。反対勢力、引き算はある。今回は足し算は丸、炭谷。引き算は長野、内海。しかし人生は勝負。トータルで足し算なのか、引き算なのか。どういう結果を残すのか。これが勝負の世界。私自身、すべてを受け止めます」

生え抜きのベテランの移籍は、若手にとってはチャンスになる。

「チームにとっては大いに活気が出る。若い選手たちは揚々と立ち向かってほしい。ポジション、役割が空いた。ジャイアンツにとって、大きな選手の役割が空いたわけですから」

長野、内海は求められた場所で新たな挑戦を始め、チーム内には新たな競争が生まれる。勝負の世界の原則に従って、19年シーズンを戦う陣容を整えた。【前田祐輔】