阪神福留孝介外野手(41)が沖縄・宜野座キャンプの“裏番長”としてチームを支えている。この日はブルペンで打席に立ち、藤浪ら若手投手陣のボールをチェック。キャンプ序盤にも北條ら若手野手の打撃投手を務めるなど、自身の調整と並行してチーム全体を鼓舞する姿が目立つ。今キャンプで阪神ナインの取り組みを紹介する「密着」の第2回は、セ・リーグ最年長野手の思いに迫った。

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午後0時10分。ブルペンが緊張感に包まれた。バットを握りしめた福留が、今キャンプ初めてブルペンの打席に立った。岩貞の打席で17球、隣で投げる馬場は15球、そして最後は藤浪の打席に立ち11球。計43球を見届けると、若手投手陣に「ありがとう!」と声を掛け、自身の打撃練習のため宜野座ドームへと足早に向かった。

野手がブルペンで打席に立つのは、実戦に向けた目慣らしの意味合いが強い。ただ、福留の「ブルペン入り」は投げた投手にも効果があった。それから数時間後。ドーム内でトレーニングをする福留のもとに藤浪が歩み寄った。両手を大きく広げる動作をしながら約10分間の講義がスタート。打者目線で気づいた点を助言した。

“外様”初の虎のキャプテンを2年務め、今季からキャプテンマークを15歳下の糸原に譲った。ユニホームから「C」マークは外れても、若手の成長を裏から支える姿勢は変わらない。キャンプ2日目には特打をする若手野手のため、打撃投手を買って出た。目を丸くする糸原、北條、植田らを相手に変化球を交えて97球を投じた。

雨の宜野座には福留を応援するかのようにかつてのチームメートが訪れた。この日は取材で訪れた元中日の山本昌、山崎武司、川上憲伸の3氏と野球談議に花を咲かせた。「全体のことを心配していた。自分のことよりも若い選手のことを考えていた」。そう明かしたのは福留が兄貴のように慕う山崎氏だ。

福留は無言で帰りの車に乗り込んだが、行動を見ればその思いは明らかだ。矢野監督は「孝介も素直に感じたことを教えてくれると思うから。そういう役割を買って、やってくれるのはありがたい」と感謝を口にした。鋭く目を光らせ、ゲキも飛ばす。そして、若手には惜しみなく自身の「財産」を伝える。もちろん目指す先に最下位からのリーグ優勝がある。日米通算21度目となるキャンプも、存在感は抜群だ。【桝井聡】

 

セ・リーグ野手最年長41歳の福留には先輩達からは「オレを超えろ」の声が飛んだ。45歳のシーズンに現役を引退した山崎氏は「年齢を感じさせない雰囲気を持っている。最低でもオレを超せと言っている」とゲキ。史上初の50歳登板をしている山本昌氏も「50歳までやれって言った。元気そう。体も絞れているし、ケガさえなければ出来る」と太鼓判を押した。