再び、赤門旋風を! 東京6大学リーグの東大。今年で創部100周年となった野球部はリーグで唯一、優勝したことがない。今年のスローガン「旋風」の下、まずは最下位脱出へ向けて動きだした。

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“未勝利エース”返上へ、ラストイヤーに挑む。東京6大学リーグの東大・小林大雅投手(3年)が7日、ジャイアンツ球場で「冬季特別トレーニング」に参加した。元プロ野球選手が大学野球選手を指導するもので、小林大は鹿取義隆氏(61)から学んだ。同じ左腕の宮台(現日本ハム)の後を受け昨春から主戦投手となるも、公式戦35試合未勝利。初勝利へ向けて、貴重なヒントを得た。

ストップウオッチ代わりにスマホを握る鹿取氏が声を弾ませた。「1秒19。いいね!」。小林大はブルペンでクイック投球を繰り返していた。セットポジションから動きだす際、右のかかとを打者に向けるという助言でスムーズな始動が可能となり「上半身の力みが減りました。制球力が上がれば」と感謝。グラブを持つ右手の使い方や左腕の振りなど、具体的に学んだ濃密な20分間だった。

クイックの速さなどトータルで勝負する。最速137キロだが、コンスタントには120キロ台。身長も167センチ。「僕は絶対的な武器がない。あらゆる手を尽くさないと」。得意のツーシームは微妙に握りを変えて3種類を投げ分け、スライダーも3種類。明大から楽天に進んだ渡辺佳は「球速以上に伸びを感じた。ボールによって肘を下げたり、テンポを変えたり。投球術が巧み」という。対戦成績は12打数3安打。創意工夫で、昨秋リーグ首位打者とも渡り合った。

創部100年の節目。最下位脱出へシーズン4勝を掲げる浜田監督からは「小林が3勝」と指令を受ける。「これだけ投げて1回も勝っていない。援護してもらった時に大量失点。投打がかみ合うようにしないと」と期待の分、悔しさも募るが、己と向き合う“強さ”がある。「初めての方の指導は新鮮。チーム全体で活用したい」。引き出しを増やした。【古川真弥】

◆東大の歴代エース 最多勝利は17勝(57~60年)の岡村甫。後に東大野球部の部長、監督、助監督を歴任。プロ入りした6選手は、新治伸治8勝、井手峻4勝、小林至0勝、遠藤良平8勝、松家卓弘3勝、宮台康平6勝。NHKキャスターの大越健介は8勝。

◆小林大雅(こばやし・ひろまさ)1998年(平10)3月5日生まれ。神奈川県横浜市出身。元石川サンダーボルト、山内中と軟式で、県内屈指の進学校・横浜翠嵐に進む。エースだった3年夏、県大会初戦に逆転負けして野球を続けることを決意し、東大現役合格。経済学部経営学科に学ぶ。好きな選手は、ヤクルト石川、ソフトバンク大竹。167センチ、70キロ。左投げ左打ち。

◆鹿取義隆氏のコメント(小林大への指導を終え)「スケールは違うが、宮台君と同じ投げ方。吸収が速い。教えたことを、すぐ再現できる」