視線はミットを真っすぐ見つめて…いなかった。ヤクルト高梨裕稔投手(27)が9日、紅白戦の紅組先発で登板。

投球動作に入るとあえて捕手から目を切った。そのままワインドアップで右腕を振り抜くと最速147キロを計測。豪快に力で押した。2回には広岡、松本直を直球で連続空振り三振に仕留めるなど、2回1安打無失点。「去年、一昨年と良い真っすぐが投げられていなかった。良い状態で、打者が空振りしてくれた」とうなずいた。

目からウロコの助言が効いた。これまで捕手側に体が突っ込み過ぎて重心移動がうまくいかず、球威が減少。目線をあえて三塁側に漂わせることでタメを作った。前日8日のブルペンで田畑投手コーチに教えられ、「捕手を両目でなく左目で見るくらいの意識」と改善。「目の部分もあって、しっかり体重移動ができた」と手応えを口にした。

目の色を変えて復活を期す。日本ハムからトレードで加入。16年は10勝で新人王も昨年は5勝と苦しんだ。過去の栄光は「ゼロだと思う」ときっぱり。燕再生工場で「キャリアハイを目指して、優勝できるように」と輝きを取り戻すつもりだ。目先の目標は開幕ローテ入り。真っすぐ前を向き、進む。【島根純】

ヤクルト小川監督(高梨について)「高めの球で空振りを取れる、持ち味を感じた。期待している。(開幕ローテに)入ってくれないと逆に困る」

ヤクルト田畑1軍投手コーチ(高梨について)「強いボールになってきた。ファウルが取れている」

◆ヤクルトで復活を遂げた選手 坂口は15年にオリックス自由契約から移籍。昨季は打率3割超の1番打者として活躍した。オリックスから16年にトレードで加入した近藤も3年間で136試合に登板。不動のセットアッパーとなった。野村克也監督時代には角、田畑(現投手コーチ)広田、野中、小早川、辻ら移籍組が活躍し「再生工場」という名称が生まれた。