オレを忘れるな!

阪神高山俊外野手(25)が23日、オープン戦初戦のヤクルト戦(浦添)でチーム1号を放った。

6点を追う8回無死。ヤクルト大下の初球141キロを強振すると、打球はバックスクリーンへ。外野はライバルひしめく激戦区。生き残りをかけた戦いが繰り広げられる中、16年新人王に輝いたヒットマンが、存在感を示した。

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頭にある残像の通りに、高山はバットを出した。8回だ。先頭で打席に入り、初球を強振。乾いた打球音を残し、白球は放物線を描いてバックスクリーンに着弾。走りだした背番号9はほおを緩めた。

「こすらずに(バットに)しっかりとかんだ。ホームランバッターではないので、バロメーターではないですけど…。(キャンプ中に)ずっとファウルになっていたところ(コース)だったので」

今季チーム1号は映像学習が生きたものだった。休日だった前日22日、浜中打撃コーチと画面を見ながら話し合った。新人王に輝いた16年打撃フォームと、今キャンプの状態が悪い時の自身。その2種類のスイング動画を並べて、長短を見比べた。浜中コーチは「かかとに体重が残っている。いいときはボールを(前に)押し込めている」と説明。この日の一撃を、高山は「こすらずに(バットに)しっかりとかんだ」と表現したが、押し込んで飛ばしたアーチとも言い換えることができそうだ。

矢野監督も「初めての投手で2段モーションの初球を仕留めたのは価値がある。打席の内容がいい形になってきた」と成長を認めた。さらに「打たされる打撃はもったいない。だから『ちょっと振っていこう』と言った。当てにいく打撃じゃなくて、しっかり振り切れるスイングとタイミングとポイントに変わってきている」と評価を高めた。

虎の外野争いは激しさを極める。ベテランの福留、糸井に加え、江越、中谷、ドラフト1位近本らがポジションを競う。高山だって負けていられない。この1本を機に、天才ヒットマンが復活を遂げていく。【真柴健】

◆阪神の外野争い ベテラン福留、“超人”糸井が両翼に君臨。中堅争いはドラフト1位の近本、21日広島との練習試合(宜野座)で逆方向にアーチを放った江越、ここまで実戦2本塁打の中谷らがひしめく。さらに昨季2軍でチームトップの26盗塁を記録した島田、来日2年目を迎えるナバーロも開幕1軍入りに向けてアピールをしている。激しいサバイバルに高山も挑んでいく。