ヤクルトの再生工場が、ベテラン投手をよみがえらせた。ソフトバンクを戦力外になり、新加入した寺原隼人投手(35)が5回2/3を5安打2失点。ソフトバンク時代の17年5月7日ロッテ戦(ZOZOマリン)以来704日ぶりの白星を挙げた。

打線も相手の隙を突いて序盤に得点を重ね、広島戦では12年9月17~19日以来7年ぶりの3連戦3連勝。リーグ優勝した15年シーズン以来1282日ぶりの単独首位に立った。

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ウイニングボールを手にすると、思わず笑みがこぼれた。704日ぶりの勝利に「正直、うれしい。戦力外になって、こういうのは想像していなかった」とかみしめるように話した。

状態はよくなかった。直球でストライクをとれず、スライダーやカーブ、フォークで粘った。6点のリードをもらった2回2死一、二塁のピンチでは、広島小窪を131キロの低めスライダーで遊ゴロに打ち取った。この日の最速は146キロ。01年夏の甲子園で約158キロを計測した当時の投球スタイルとは異なるが、ベテランらしく5回2/3を2失点にまとめた。リードした中村は「守りに入らず、ゲームを作ってくれた。新天地で、なんとか勝たせてあげたいという一心だった」と安堵(あんど)の表情だった。

ヤクルトは4球団目となる。「すごくいいチーム。お世辞抜きで、いいチーム」と繰り返した。加入が決まり、すぐにオリックス時代の同僚で同い年の近藤と「一緒に喜び合おう」と連絡をとりあった。練習が始まると、ベテラン左腕石川の姿に感銘を受け、よく話をするようになった。「勉強になる。妥協をしない。だから勝ち星を重ねている」。地道な努力の偉大さを痛感した。

チームは、広島を相手に3連戦3連勝は12年9月17~19日(マツダスタジアム)以来7年ぶり。単独首位にも立った。「拾っていただいて、何が何でも結果しかない。もっといい投球をして、長いイニングを投げたい」。優勝を目指すチームに、頼もしいベテランが加わった。【保坂恭子】

◆ヤクルト移籍で復活した選手 坂口は16年にオリックス自由契約から移籍し、16~18年は3年連続規定打席をクリア。昨季は打率3割1分7厘(リーグ9位)をマークした。オリックスから16年7月にトレードで加入した近藤は昨季、リーグ最多の74試合登板で最優秀中継ぎ投手に。野村克也監督時代は角盈男、田畑一也(現投手コーチ)、広田浩章、野中徹博、小早川毅彦、辻発彦ら移籍組が活躍し「再生工場」という名称が生まれた。