クモの巣のように、強敵をからめ捕った。日本ハムが今季から導入する大胆な守備隊形が、面白いように決まった。

オリックス6回戦(ほっともっと神戸)の守り。1回2死走者なしで、3番吉田正尚外野手(25)を“正尚シフト”で一、二塁間への「三ゴロ」に打ち取った。前日17日までの2連戦で、やられっぱなしだった難敵の出ばなをくじいて、3試合ぶりの勝利を手にした。

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えっ?何が起こったの?驚きの光景に、敵地スタンドが一瞬、ざわめいた。1回、日本ハムの守りだ。2死走者なしで、オリックスの3番吉田正を打席に迎えると、それまで三塁ベース付近で守っていた横尾が、一、二塁間深くへ小走りで移動した。つまり、三塁はガラ空きに。「普通です」と栗山監督は表情ひとつ変えなかったが、これが、左の強打者、吉田正に対して、データをもとにした“正尚シフト”だった。

変化球を引っかけた吉田正の打球は、一塁手・中田と二塁手・杉谷のやや後方に陣取った横尾のもとへ転がった。本来なら一、二塁間を破り右前打になるはずの打球は、珍しい右方向への「三ゴロ」に。横尾は「データ担当の人たちが一生懸命、やってくれている。相手打者はイヤだったと思います」と、満足そうに笑った。

今季から取り入れる大胆な守備隊形。主に対象は各球団の中心打者で、先発投手が狙い通りのコースに投げた場合、割合の多い打球方向を“ふさぐ”狙いだ。普通の守備位置なら取れた打球がヒットになるなど、裏目に出る可能性もあるため、当初はチーム内でも反対意見があったという。一番重要なのは、バッテリーの理解だ。

緒方守備チーフ兼内野守備走塁コーチは「今日は、はまったね」とシフト成功に声を弾ませ「ここ2試合、吉田正にはやられていたので、1打席目でゴロに打ち取れたのは大きかった」。やられっぱなしだった難敵を3打数無安打に封じて、チームも久々に胸のすく白星を手にした。【中島宙恵】