打席で冷静だった分、塁上で感情を爆発させた。西武栗山巧外野手(35)は、「ここやな」と勝負どころの打席に向かった。2点を追う8回、連続押し出し四球で同点とし、なお2死満塁。低めの直球を右前へ運び、勝ち越し適時打を決めた。「試合を決める一打がここまで1つもなかった。うれしくてガッツポーズしちゃいました」と冷静沈着なベテランが、今季初の決勝V打に感情を突き動かされ、右手を振り上げた。

チームの野手最年長にして、ここまで全24試合に先発出場。打席での心得は「シンプルにしっかり、打てる球がきたら打とう」。2回の第1打席ではカウント3-0からストライクを積極的に振りにいった。「打ちにいかないと自分のタイミングにならない。自分のリズムで、テンポでいけるようにしている」。試合数と同じ24安打。好不調に左右されないプロ18年目の打撃術を打席に落とし込む。

対峙(たいじ)するオリックスは少年時代あこがれたユニホームだった。3月20日に現役引退したイチロー氏の登録名が鈴木だった頃から、練習場に通った。「しょっちゅうファームを見に行っていたから鈴木だったときのサインもあるんです」。もちろんイチローのサインもある。「まだ家にあると思いますよ」と、あこがれた平成のスターの古巣を相手に輝いた。

チームは今季初の4連勝。7日以来、3週間ぶりの貯金で4月の勝率5割以上を確定させた。ただ相手先発のK-鈴木を攻めあぐね、「それを今から反省しないと。次対戦する時まで考えておきます」。すぐに、29日の平成最後の試合に切り替えた。【栗田成芳】