6年目の右腕が連敗を4で止めた。中日阿知羅拓馬投手(26)が、今季2度目の先発でプロ初勝利を挙げた。右親指の皮がめくれるアクシデントもあったが、5回3安打2失点。打ってもプロ初安打初打点をマーク。全国で10人ほどしかいないとされる珍名投手が、竜に待望の令和1勝をもたらした。

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阿知羅が、念願の白星の味をかみしめた「最後にヒロシ(鈴木博)がアウトを取ってくれたことがうれしい」。5回83球3安打2失点に抑え、継投にも支えられてプロ初勝利を挙げた。

190センチの大男が躍動した。高々と振りかぶるワインドアップ。1回、連打で1死一、三塁のピンチも冷静だ。得点力リーグトップのヤクルトの主軸山田哲、雄平を抑えて切り抜けた。失点は4回の雄平の2ランだけ。右親指の皮がむけるアクシデントで降板したが、6年かけてウイニングボールを手に入れた。

プロ入り後2年間は、制球難で2軍暮らしが続いた。「野球やってる感じがしなかった。情けなくて悔しい2年間だった。指導者、先輩たちが、この投手を何とかしようとしてくれたおかげです」。1軍初出場は3年目の16年。昨季は1軍に上がれなかった。昨年からヒゲを蓄え、今年から社会人以来のワインドアップを取り入れた。脱皮を後押ししてくれた人たちの顔が、記念球に浮かんだ。

「阿知羅」は「(珍名と)よく言われるんです。親戚くらいしか、わからないです」という全国で10人程度しかいない珍名。バットでも記念球を手に入れた。2回1死三塁。平田から譲り受けたオレンジ色のバットで、プロ初安打、初打点。「80%は平田さんのおかげです」と感謝した。

開幕から先発ローテーションを担った笠原、吉見、山井が登録抹消中。チームは4連敗していたが、孝行息子が止めた。「プロ初勝利を挙げられたことがチームにとって宝物。次の登板でも勝ち星を増やして欲しい」と与田監督はたたえた。大入り満員の本拠地で、ファンへ12球団最後の「令和」初勝利を届けられた。「1軍であまり見られない投手です。これからも阿知羅という名前を覚えて欲しいです」。今季の竜投を担う新ヒーローは、プロ入り初のお立ち台で、名前のアピールも忘れなかった。【伊東大介】

◆阿知羅拓馬(あちら・たくま)1992年(平4)11月20日、大阪府生まれ。大垣日大-JR東日本を経て13年ドラフト4位で中日入団。昨季は1軍登板がなく、今季は4月29日に1軍昇格。昨年からヒゲを生やし、今季から社会人以来のワインドアップを復活させた。190センチ、95キロ。右投げ右打ち。独身。今季推定年俸700万円。