<谷保さんのアナウンス講座(1)>

うぐいす嬢って難しい。少年野球の試合では、選手紹介や交代のアナウンスを親御さんが担当することが多い。だがマイクを通して大勢に向けて話すにはコツがいる。そこでプロ野球、千葉ロッテマリーンズの場内アナウンスを29シーズン務める谷保恵美さん(52)を突撃。全3回にわたって極意をご教授いただいた。谷保さんの「アナウンス講座」、初回は発声や練習法についてお届けします。【取材=鎌田良美】

 ◇  ◇  ◇

-早速ですが、アナウンスする時に一番気を付けていることは何ですか

「やっぱり元気にアナウンスするっていうところですかね。自分が思うよりもゆっくり。自分が思うよりもちょっと大きい口を開けて、姿勢良く、ですね」

-声はどういう意識で出すのでしょう

「歌を歌う感覚に近いかもしれないです。おなかの下に力が入る。私の場合は昔、少年少女合唱団に入っていたことがあるので、その発声だと思うんですよね。話し声よりは少し高くなります」

-姿勢も大事

「椅子に寄り掛かっちゃうと声って出ないので。半分くらいに浅めに腰掛けて、背筋を伸ばしてしゃべる。それだけで結構、発声は変わってくると思います」

-テンポは

「なるべくゆっくりの方が聞こえると思いますね。屋外の球場だと特に、スピーカーを通すと声が広がって反響してしまいます。それを頭に入れておくといいです」

-おすすめの練習法はありますか

「私は高校野球の甲子園中継をまねしていました。守備紹介の時なんかはカメラで選手を追いながら、音声を場内アナウンスに切り替えてくれるので。これくらいのスピードが聞こえやすいんだなっていうお手本になります。プロ野球でも好きなチームがあれば『ショート、坂本』とか言いながら見るのも楽しいと思いますね」

-客観的に自分のアナウンスを聞いてみることも大事では

「昔はカセットデッキにカラオケマイクで録音してチェックしてましたね。早いなとか、これが聞きづらいなとか。少年野球のお母さん方はよく2人でアナウンスされてたりするので、アドバイスし合うのもいいんじゃないでしょうか」

-のどのケアはされていますか

「のどあめが必須です。カリンのあめを愛用していて、試合中になめていることもあるくらいです。乾燥しないっていう意味ではすごくいい。うちに帰ったらタオル巻いたりしてますけど、風邪はひかないように気を付けてますね」

-本番前に発声練習は必要でしょうか

「常にしゃべっているだけでも準備運動になりますよ。例えば好きな曲を聴いて、ぶつぶつ歌いながら駅から歩くとかでもいいと思います。気分が上がるっていうのも大事です」

-上手に話そうと気負うとかえってプレッシャーに

「間違いは絶対にありますからね。私も言い間違いをしたり、線が抜けてマイクが入ってなかったこともありました。だから、うまくやろうって思うよりも、明るくしゃべった方がいいと思います。スイッチを入れて、大げさくらいに大きい声、大きい口を開けたら、いつもよりちょっと、良い声が出るかもしれませんよ」

発声準備が整ったら、いよいよ球場へ。何を持って行けば、スムーズにアナウンスが進行できるのでしょうか。(つづく)

◆谷保恵美(たにほ・えみ)1966年(昭41)5月11日生まれ、北海道・帯広市出身。90年ロッテオリオンズに経理担当として入社。91年から場内アナウンス担当。1軍公式戦アナウンスは昨年5月18日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)で通算1700試合。連続記録は96年10月1日の近鉄25回戦から現在も継続中で、昨年6月1日の広島戦で1500試合に到達した。16年に引退したサブロー外野手をアナウンスする「サブローーーーー」のコールは千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)の名物だった。広報業務も兼務する。