阪神青柳晃洋投手(25)が勝負どころで力を発揮した。2点リードの6回2死一塁。一発が出れば同点の場面で迎えるは4番雄平。粘られ、フルカウントに。この日投じた97球目。142キロ直球を外角低めいっぱいに決めた。一瞬の間を置いて、球審がストライクの判定。見逃し三振を奪った右腕は、満足そうに駆け足でベンチに戻った。

「調子はよくなかったんですけど、勝負どころではコースに決まってくれた。野手の方が守ってくれたんで、僕は僕の仕事をするだけだった。初回に点を取ってもらったので『1点はいい』というぐらいの楽な気持ちで、大胆に攻めることができました」

走者を背負っても、崩れなかった。球威で打者を押し込み、3つの併殺を奪う。「ランナーを出してしまって、野手に申し訳なかった。なんとかゲッツーという形で。野手に助けられて最少失点で(ベンチに)帰ってくることができました」。味方を信じて腕を振った結果だった。矢野監督も「今年は特にゴロを打たせるということもできている。相手も左打者を並べてくる中で、青柳の成長を感じている」と称賛した。

柔和な顔つきそのままに心優しき青年だ。16年10月のことだ。阪神に2年間在籍した投手のトラヴィスが戦力外通告を受けた。当時まだ独身で、虎風荘に住んでいた青柳は、急いでタクシーを呼んだ。「トラが関西は最後だって言うから…。思い出にユニバに行きたいって。スパイダーマンとか、ハリーポッターとか。4つアトラクションに乗れたので大満足でしたね」。寮の部屋は隣で、日頃から仲の良かった2人。別れが決まり、寂しさを紛らわす「最後の時間」を閉園まで付き合った。友の思いを胸に、与えられたチャンスで全力を尽くしている。

これでチームトップの4勝目をマーク。自己最多タイの勝ち星にも「勝ちが付くか付かないかというのは本当に運だと思う。僕は運が良くて勝たせてもらっている。西さんだったり、ランディのように長いイニングを投げられる投手にならないといけない」と慢心はない。成長著しい変則右腕の進化が、虎を救っている。【真柴健】