阪神2年目の高橋遥人投手(23)が、377日ぶりの復活勝利で巨人連倒を導いた。失点は2回に大城に浴びた2ランだけにとどめ、7回9奪三振の快投。左肩の不調で長らく2軍生活が続いたが、今季3度目の登板で昨年5月以来の白星をつかんだ。チームは巨人戦6連敗後4連勝と巻き返し、今季最多の貯金6。勢いを加速させ、31日から首位広島との3連戦に臨む。

   ◇   ◇   ◇

高橋遥は8回を締めたジョンソンに「イイネ、イイネ」とベンチで肩を組まれた。「ありがとうございます」。マウンドの堂々とした立ち居振る舞いとは一変。まだまだ初々しい姿があった。

2回に1発を浴びたものの、直球で押して巨人打線に3回以降は二塁を踏ませず。丸と岡本の中軸からの4三振を含めて9三振を奪った。プロ最多の120球を投げても、キレは変わらなかった。「久しぶりに強いボール、納得いくボールがすごく多く投げられた。梅野さんに引っ張ってもらって、思い切って攻めることができました」。巨人には昨年4月の甲子園で5回途中7失点と炎上したが、1年越しにリベンジした。

今季はここまで2試合に登板。23日のヤクルト戦(甲子園)は6回無失点と好投も、援護に恵まれなかった。ようやく昨年5月18日以来、待ちに待った白星を手にした。「ケガしていた分、鳴尾浜でいろいろな人に支えてもらった。全然違います。何百倍もうれしいです」。こみ上げる気持ちは、ひと味違った。

17年ドラフト2位で入団し、昨年4月11日の広島戦で華々しくデビューした。球団新人では59年の村山実以来となる甲子園での初登板初先発初勝利という快挙を達成。しかし、その後は左肩や肘の不調に悩まされた。周囲の期待、初めて体験する痛みに戸惑い、当初はなかなか言い出せなかった。6月10日の登板を最後に2軍調整となった。鳴尾浜で走り込みを続け、シーズンを終えた。元気な仲間を見て「野球ができていいなあ」と漏らすこともあった。この日の登板前、恩師の亜大・生田勉監督(52)に1通のメールを送った。「腕がちぎれても頑張ります」。生田監督は「ちぎれたら困るんだけど…」と苦笑いしたが、懸ける思いの強さがにじみ出ていた。

勝負どころで三振を奪うと、小さなガッツポーズを作った。痛みに苦しまずに気持ちよく腕が振れる。投球の合間に自然と浮かんだほほ笑みは、苦難のバックボーンがあるからこそだろう。矢野監督は「いつも勝てそうだなと見ていた。能力が高い投手、ここからしっかり頑張っていってくれる期待を持てる投球」と絶賛。これからは堂々と先発ローテを守る。【磯綾乃】

◆高橋遥人(たかはし・はると)1995年(平7)11月7日、静岡県生まれ。常葉学園橘中で3年夏に全国制覇。常葉学園橘2年夏に甲子園出場。亜大では1年秋からリーグ戦に登板し、3年春に全日本大学選手権に出場。17年ドラフト2位で阪神入団。18年4月11日広島戦でプロ初出場。181センチ、80キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1300万円。