日本一球団が見せた、一瞬の隙を見逃さなかった。楽天ドラフト1位ルーキーの辰己涼介外野手(22)が、8回に好走塁で貴重な追加点を挙げた。球団初の三重盗に記録が訂正された28日の走塁は自らのミスであることを“告白”しつつ、アグレッシブな姿勢を貫いた。ソフトバンクのエース千賀からもぎ取った1勝で同率首位に並んだ。

その姿は、まさに野球小僧だった。1点を勝ち越した直後の8回1死二、三塁。三塁走者の辰己は、島内の右翼への浅めの飛球に対し、タッチアップの態勢を取った。2、3歩で止まりかけたが、ソフトバンク周東が離塁の大きかった二塁へ返球するのを見て再加速。猛然とホームに滑り込んだ。「二塁に投げるとは思わなかったけど、全力で(二塁に)返すような感じじゃなかった。もう1点が欲しかった場面。先の塁、先の塁という意識に、体が反応した」と胸を張った。

わずか3日前のことを「やらかしました。ホンマにションベン、ちびりそうになりました」と苦笑交じりに振り返る。28日の西武戦の7回。逆転に成功した後、2死満塁でフルカウントが続き、スタートを繰り返していた二塁走者の辰己は「1本で(本塁まで)かえろうという意識が強すぎて」けん制球に反応できなかった。三塁走者の島内が投げた瞬間に本塁へ突入して追加点につながり、31日になって記録も球団初の三重盗に訂正された。「計算通りですね」と笑わせたが、実は肝を冷やしていた。

この日、茂木の中前打で二塁から決勝のホームを踏んだ代走オコエとともに「ビッグな走塁」と褒めた平石監督は、ユニークな視点で辰己をたたえた。「辰己はものすごく野球が好き。だから、走塁だけでなく全てに興味がある。常にチャンスをうかがうという発想、センス…。まず興味がないとできないこと」。貪欲な姿勢は、グラブに刺しゅうして刻む「野球バカ」そのもの。開幕前には「プロに入って、一番難しいと感じています」と話していた走塁面で強烈な存在感を示した。【亀山泰宏】