満身創痍(そうい)の阪神糸井嘉男外野手が一振りで決めた。守護神ドリスが同点に追いつかれて迎えた10回。近本、糸原の連打で1死一、二塁。守護神益田の真ん中低め、148キロ直球を引っ張った。

「このチャンスをものにしようと、勝ちたい一心で振り抜きました」。打球は一、二塁間を抜け、近本が生還。糸井は一塁上でベンチに向けて手をクルクル。独特のポーズで喜びを表現した。「(チームの)みんな、勝ちたい一心で毎試合やっているんで。こういうゲームを増やしていきたいと思います」。3試合連続タイムリーで、6度目の勝利打点はリーグトップタイ。ここぞの場面で、ベテランが勝負強さを発揮した。

体調は万全ではない。5月に入り、コンディション不良で出場を制限する日もあった。6月1日の広島戦(マツダスタジアム)では今季初の欠場。それでも最年長福留を欠くチームには、この男が必要だ。

実は交流戦に強い。ロッテ3連戦前の交流戦打率3割1分2厘は歴代4位。17年にオリックスから加入したパ・リーグを知る男は、昨季も18試合で3割4分4厘13打点と高打率を残していた。交流戦を前に「顔なじみの選手は?」という問いには、なぜか「ズレータ!」と回答。ハイテンションに打ちまくり、ロッテ3戦は14打数6安打5打点1本塁打。打率は脅威の4割2分9厘と頼もしい。

矢野監督は手負いのベテランに「身体のコンディションのこともある。こういうタイミングでDHがあったので使えた。嘉男も集中力を高めて、そういう仕事をしてくれている」とたたえた。お立ち台に上がった糸井は「一戦必勝で、みなさんと一緒に戦っていきましょう! 応援よろしくお願いします」と、千葉の虎党に誓った。チームは7日から清宮も出場予定の日本ハムと甲子園で3連戦。3差で追う首位広島猛追へ、超人のバットに、乞うご期待だ。【奥田隼人】