6月の第3日曜日は「父の日」。幼き頃に追いかけた父の背中、遠く離れて暮らす父への思い、そして感謝の気持ち。野球人たちが父親との濃厚な思い出を語った。

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フレッドペリーの水色のポロシャツはすっかりお気に入りだ。父の日、巨人若林晃弘内野手(25)の父憲一さんは息子からのプレゼントを着て、午前中からゴルフの練習に行っていた。「僕はブランドとか分からないんだけど、いい物をもらってうれしいね」。気持ちのいい汗をぬぐいながら、昼ごろに家路を急いだ。

憲一さんは元大洋の両打ちの外野手。72年から10年間プレーした。「田代(富雄=現DeNA打撃コーチ)はものすごく練習していた。松原(誠)さんにはキャンプの夕食の後に『おい、行くぞ』ってティー打撃に呼んでもらったね」。一流のすごさを体感した。

3姉弟末っ子の晃弘には幼少期から素質を感じていた。「物事を覚えるのが早くて『これは…』とちょっと思ったね」。テレビで巨人戦を見れば松井秀喜氏のフォームを完璧にまねた。少年野球チームでランダンプレーのやり方を教えるとすぐにコツをつかんで反復練習をしていた。

両打ちの練習時間を生む準備も自然と身についた。少年野球の練習前日に自ら道具をかばんに詰め、練習後は必ずグラブ、スパイクを教えた通りに磨いていた。「忘れ物をした記憶はほぼないね。それほど野球が好きだったんでしょう」。やめたいという言葉は1度も聞いたことがない。

月日はたち、プロ野球選手として定位置確保へアピールを続けている。「プレゼントもありがたいけど、何よりうれしいのは元気でプレーする姿をテレビで見られること。必死に食らいついてほしいね」。帰宅後はすぐに、テレビへかじりついた。【桑原幹久】