ドラフト6位ルーキーが代打の切り札に名乗りを上げた。楽天渡辺佳明内野手(22)が「日本生命セ・パ交流戦」DeNA2回戦(横浜)の5回、代打で貴重な2点適時二塁打を放ち、大逆転勝利に貢献した。

19日の阪神戦でも代打で適時打をマーク。横浜高時代に祖父で元監督の渡辺元智氏とともに甲子園切符をつかんだこともある横浜スタジアムで確かな成長を示した。

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渡辺佳への信頼度は、平石監督の言葉が物語っている。「あそこは『とりあえずの(渡辺)佳明』じゃなく『勝負にいっての佳明』でした」。1回に6点を先行しながら、その裏に7失点で逆転を許した。さらに4回に2点を追加された直後、5回2死一、二塁からDeNA平田の変化球に食らいついて左中間を割った。

代打としての心構えを確立しているのが頼もしい。「『自分のバッティング』より『自分のスイング』を意識しています。『自分のバッティング』をしようとすると、崩されることが多い。素振りと同じような感じで打っていますね」。ただでさえ初対戦の投手ばかりの1年目。交流戦の代打となればさらに難度は上がるが、事前に頭に入れる情報は「球種と(左右や上手、横手など)どこから投げるか」程度の最低限にとどめる。「(相手)投手というより『自分のスイング』なので」と繰り返す。

横浜高時代、監督である祖父とともに甲子園をかけて戦ったハマスタ。「地元でベイスターズファンの人からも声援をもらってうれしかった。(高校時代は)プロとしてここに立てるなんて思ってもみなかったけど、帰ってきたな、という感じがあった」と笑う。使用する「美津和タイガー」のバットは、かつて松坂大輔とともに春夏連覇を達成し、当時唯一の2年生レギュラーだった松本勉さんがメーカーの担当者だった縁もあって大学時代から使い始めたもの。相棒にも「横高」の血が通っている。

指揮官が寄せる打撃への信頼を伝え聞き「うれしいです」と照れた後で表情を引き締めた。「『とりあえずの佳明』に戻らないように頑張ります」。右の代打として勝負どころで存在感を示してきた渡辺直が、右足首の脱臼で登録を抹消された。ここまで4打数2安打3打点と代打成功率5割の22歳は、イーグルスの新たな勝負手となれる可能性を秘めている。【亀山泰宏】