阪神鳥谷敬内野手(38)が5月31日広島戦(マツダスタジアム)以来、約1カ月ぶりの安打で糸原の勝ち越し弾へ流れを呼び込んだ。

粘って粘ってもぎ取った。3-3の4回。1死から8番木浪が安打で出塁し、2番手島本に代わって「代打鳥谷」がコールされた。広島先発アドゥワに対し、カウント2-2から4球連続ファウル。高め直球から低めチェンジアップまで、食らいついた。フルカウントからの10球目。外角高めに浮いた141キロ直球にバットを合わせた。鳥谷らしい、逆らわないバットコントロールで打球を左翼前に運んだ。代打で7戦7打席ぶりの安打。「良かったです」。試合後の本人は言葉少なでも、ベテランの一打を待ち望んだ甲子園は一気にボルテージを上げ、糸原の勝ち越し3ランまで突き進んだ。

4月14日中日戦(甲子園)での先発出場を最後に、スタメンを離れて代打出場の日々が続く。今季は出場37試合中、スタメンは6試合のみ。打率は1割4分3厘と、まだまだ思うような結果は出し切れていない。若手が台頭するチーム状況において、難しい代打での出場には「それはしょうがない」と割り切る。日々の練習では、若手が多く顔を出す早出の時間から決まって姿を見せる。野球に対するひたむきな姿勢で、試合に向けて準備する。

矢野監督はベテランの一打に「いつも本当に鳥谷らしく変わらず準備をして試合に臨んでいる姿を見ている。このヒットがトリ自身にもいいヒットになったと思うけど、そういう背中をみんな見て若い選手が学んでいる部分も多いと思う。これからもそういう部分でも期待しています」とねぎらった。背番号1の存在が、チームをさらなる上昇に導いていく。【奥田隼人】